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11月のColumn ☆膵炎ってなあに?☆

ペットは多くの場合、自分の弱みを見せたくないため腹痛などの痛みをあからさまに表現したりはしません。ですから、もし誰が見てもはっきりとわかるような腹痛を訴えていたら、それは尋常ではないということです。犬が急に激しい腹痛を示す原因の一つに急性の膵炎がありますが、膵炎は時として命も奪う恐ろしい病気です。


★膵臓の位置と働き★

膵臓は胃のすぐ後ろにある、やや細長くて平べったい臓器です。膵液と呼ばれる消化液を十二指腸に分泌する働きと、血液中のグルコース(血糖)を調節するホルモン、インシュリンを血液中に分泌する働きの2つを持っています。膵液の中にはトリプシノゲンと呼ばれる物質が含まれており、これが腸管内で腸液と反応することによってたん白質を分解する酵素、トリプシンとなります。


★膵炎の原因★

膵炎の原因ははっきりと分かっていませんが、本来腸管内に分泌されることで活性化するはずの膵液が膵臓内で活性化してしまい、自らのたん白質を消化してしまうために炎症がおきるといわれています。
発症するための因子がいくつかあるといわれており、高脂肪の食事を続けたことやジャーキーの過食による肥満、急激な食事変化、高脂血症、ある種の薬品(ステロイド剤、利尿剤、潰瘍治療剤など)や毒物(殺虫剤など)の摂取、外傷や手術による膵臓の損傷、高カルシウム血症、副腎皮質機能亢進症、上皮小体機能亢進症、感染症(ウイルス、寄生虫)などと関連があると言われています。 
またメスの中〜高齢犬に見られることが多いことも知られており、犬種ではミニチュアプードル、ミニチュアシュナウザー、コッカースパニエル、ウェスティなどによくみられます。


★膵炎の症状★

膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎は突発的に激しい症状が見られるのに対して、慢性膵炎は単純な下痢や嘔吐が長期にわたり続きます。
急性の場合の主な症状は嘔吐、下痢、激しい腹痛、発熱で、食事を全く受けつけなくなります。下痢は始めは黄色っぽい水様便ですが、次第に非常に臭い灰白色の便になり、さらにひどくなると血液が混ざるようになってきます。お腹が非常に痛いため、からだを丸めてお腹をしきりに舐めたり噛んだりするしぐさをし、お腹をなるべく冷たい地面につけるように腹ばいになって、人が触ろうとするのをいやがります。さらに症状が進むと、ショックによる血圧低下をおこし、低体温、脱水による虚脱、黄疸がみられるようになり、膵臓が壊死してしまえば死亡してしまうこともおこり得ます。
慢性膵炎の場合は他の消化器疾患と区別のつかない嘔吐や下痢、食欲不振が続き、脱水や体重減少が見られるようになります。さらに、長期化して膵臓が徐々に破壊されるとインシュリンが分泌できなくなり糖尿病に発展することもあります。 

★膵炎の診断法★

膵炎の初期は、ほかの胃腸炎などと区別がつきにくく診断は困難です。レントゲン撮影を行ったり、超音波検査で膵臓周囲を調べることである程度の推測ができることもありますが、確実に膵臓が炎症をおこしているかどうかを調べるには、血液中の炎症細胞や膵臓の酵素量を調べて判定を行います。


★治療法★

残念ながら自らを消化してしまった膵臓を元通りに修復する薬はありません。なるべく早期発見をして、炎症を取り除き、それ以上症状が悪化しないような治療法を行っていきます。
具体的には鎮痛消炎剤を使って痛みを取り除きながら数日間の絶食を行い、膵臓を休ませて消化酵素を分泌させないようにしていきます。脱水や栄養失調を防ぐために水分と栄養は点滴によって補給していきますが、それでも足りない場合にはお腹にチューブを通して腸に直接栄養食を補給することもあります。
膵臓の炎症が取れたら少しずつ食事を食べさせるようにしますが、脂肪は膵液の分泌を強く刺激するため、まずはおかゆのような炭水化物の消化の良い食事から始めます。そしてその後茹でた鶏胸肉やカッテージチーズのような低脂肪のたん白質を徐々に加えていくようにします。


★予防法★

脂肪の多い食事や肥満が膵炎の引き金となることが分かっているため、予防には食事の管理が非常に重要になります。日頃から人の食べ物の味は覚えさせない、おやつ(特に脂っこいものや消化の悪いもの)を過剰にあげない、拾い食いやごみあさりなどは絶対にさせないようにしつける、突然食事内容をがらりと変えない、などに気をつけてあげましょう。また、体重にも常に気を配り、定期的に計測して肥満を予防するのも大切なことです。