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犬の視覚は白黒ってホント? 〜犬が見ている景色〜【その他】

五感といわれる感覚は「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」の5つですが、そのうち私達人間は見ること「視覚」を主に使って周囲の情報を得ていているため、視覚が他の動物よりも発達しています。それでよく、フルカラーで物を見ることができるのは人だけで、犬はすべてが白黒にしか見えない、という話を聞きますが、実際のところはどうなのでしょうか?


★物を見る仕組み★
 
物が見える仕組みはカメラが写る構造とほぼ同じだと思えばわかりやすいかもしれません。光の量を調節する絞りは虹彩、カメラのレンズは水晶体と呼ばれる部分に相当し、水晶体で屈折した光は目の奥の網膜で焦点を結びます。網膜はカメラのフィルムに相当し、ここは明るさや色を感じ取る視細胞でびっしりと覆われていて、これらの細胞が光によって刺激されることによって、電気信号が視神経を通って脳に送られ、脳で現像作業が行われ、画像として感じることができるのです。


★色を感じる仕組み★

黄色、緑、青の3つの色は光の三原色とよばれ、全ての色はこの3つの色の組み合わせによってできています。人の場合、3色に対して色を識別する「錐状体(すいじょうたい)細胞」をそれぞれ3種類持っているため、フルカラーで色を識別することができるのです。
ところがそれに対して、犬を含めた多くの哺乳類は実は2種類の錐状体細胞しか持っていません。犬は黄緑色と紫色は違う色として区別をすることができますが、赤からオレンジ、黄色、黄緑、緑色にかけての色は一つの色としか感じることができません。ですから、たとえば紅葉したもみじの赤から緑にかけてのグラデーションを感じることはできず、赤・黄・緑の信号機の色を見分けることもできないのです。また、青と紫の区別をつけることも難しいようです。





★犬は近視?★

水晶体は筋肉の働きによってその厚みを調節することで屈折率を変化させ、ちょうど網膜に焦点を結んではっきりとした画像を映し出します。しかし、この水晶体の調節機能がうまくいかず、水晶体で屈折した遠くのものの光が網膜よりも手前で焦点を結んでしまい、何となくぼんやりと見えてしまうのが近視です。また逆に網膜よりも後ろで焦点が結ばれてしまうのが遠視です。よく犬は近視と言われていますが、調べてみると品種によって遠視気味の犬種と近視気味の犬種がいるようで、狩猟犬はやや遠視気味であるという報告があります。また、全ての犬は近すぎるもの、70センチよりも手前にあるものに関しては焦点を合わせることができずにぼんやりとしか見ることができないようです。



★人より広い視野★
 
視野は目のついている位置によって決まります。人の場合、目は両方とも前を向いているため、視野は約200度、そして両目の視野が重なって立体視できる部分は約120度と言われています。それに対して犬は人よりも左右に目がついているために視野は250度、もあります。しかし、立体視できる範囲は人よりも狭く、約100度といわれています。特に鼻の長い犬種は自分の鼻が視野をさえぎるため、立体視できる範囲がより狭くなってしまっているようです。立体視は、物の遠近感を感じて獲物との距離感を正確に把握し、確実に捕まえるために必要な能力ですが、どうやら犬は立体視できる部分が少ない分、動体視力や聴覚、嗅覚などで視覚をカバーしているようです。現に動体視力、動くものを目で追う能力は人の数倍も優れているという報告があります。




★暗いところでも見える能力★

ときどき、愛犬の写真を撮ろうとして、間違えて正面からフラッシュをたいてしまったことはないでしょうか? たぶん目が白く光ってしまって不気味な像に写ってしまったハズです。これは犬の網膜の後ろ側にある「タペタム」と呼ばれる特殊な細胞の層のせいです。この層は光を反射する作用があり、網膜を通過した光を反射してもう一度網膜を刺激することによって、弱い光を増幅させる作用があります。このようにして犬は弱い光でも感じやすくするのと同時に、光を感じる桿状体細胞を増やして暗闇の中のかすかな光でも像として捕らえる能力をアップしているのです。


★見えていなくても平気なの?★

このように犬の見えている世界はどうやら人とはかなり異なるようです。野生では陰に潜んでいる獲物を見つけたり、逃げる動物を追いかけたりしなければいけないはずですが、あまり視力がよくなくても大丈夫なのでしょうか。
犬はもともと夜行性の動物です。暗闇の中でにおいを頼りに獲物を追いかけたり、小動物がたてるわずかな音を聞き逃さずに捉えたりすることによって、視力だけに頼らずに暮らしています。視力以外のもの、聴覚や嗅覚を非常に発達させることによって、必要な情報を手に入れて生活しているのです。




犬は視覚よりも嗅覚を発達させることによって、世の中の情報を手に入れることにした動物です。私達が「あんなものを見た、こんなものを見た」と思うのと同じように「あんなにおいがした、こんなにおいがした」と思いながら生活しているのかもしれませんね。

キーワード

犬 目 視覚