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呼吸循環器

健康管理 心雑音が聞こえたら 【呼吸循環器】

ペットの健康診断に行くと、獣医さんは胸に聴診器を当ててじっと音を聞いていますよね。あれは主に心臓からの音、「心音」を聞いているのですが、心音とは心臓の何の音であるか皆さんはご存知ですか? そして、その心音に混じって異常な音が聞かれた場合は「心雑音」と呼ばれますが、これはどのような病気が考えられるのでしょうか?


★心臓の構造★
 
心音とは何かをお話する前に、まずは心臓の構造について簡単に説明をしておきます。
心臓は血液を全身に流すためのポンプです。心臓自身が収縮したり拡張したりすることによって全身からの血液を肺に送り、肺で酸素と結びついた血液をさらに全身に送り出す働きがあります。心臓は筋肉の壁によって右と左の部屋に分かれていて、右の部屋は全身からの血液を集めて肺動脈から肺に送り出し、左の部屋は肺からの血液を大動脈から全身に送り出しています。それぞれの部屋はさらに上下に「心房」と「心室」に分かれていて、その間とそれぞれの動脈の中には血液が逆流しないように弁がついています。右の部屋の中にある弁を「三尖弁」、左の部屋の中にある弁を「僧帽弁」、それぞれの動脈の中にある弁を「肺動脈弁」、「大動脈弁」と言います。

★心音とは★

心臓が動く音として、よくテレビなどでも「ドックン、ドックン」という音を聞きますよね。あの音は聴診器で聞くことができるのですが、動物の場合は人よりも心拍数が早いので実際には「ドドッ、ドドッ、ドドッ」と聞こえます。どちらにしても、心音は大きく「ドッ」と「クン」の2つの音に分けられます。
始めの「ドッ」は「第T音」といいます。心臓全体がぎゅっと収縮して血液を全身に送り出すときに三尖弁と僧帽弁が閉まって大動脈や肺動脈に血液が流れる音です。
次の「クン」は「第U音」です。心臓が収縮を止めて拡張し始めるときに一度送り出した血液が戻ってこないように大動脈弁と肺動脈弁が閉まるときの音です。
本来はそのあとにも血液が心臓の中を流れる音として「第V音」、「第W音」が存在しますが、正常であれば非常に小さい音であるため聴診器で聞き取ることは困難です。



★心雑音とは★

通常の「ドックン」以外に何か音が聞かれた場合、それを「心雑音」と呼びます。
通常は「シュー」とか「ザー」と言った音で表現されますが、それがドックン、ドックンのどの場所で聞こえるかによって分類され、診断の手がかりとなります。雑音が第T音と第U音の間(ドッとクンの間)にある場合を「収縮期雑音」、第U音と第T音の間(クンと次のドッの間)にある場合を「拡張期雑音」といいますが、時には心音全体にかぶさるように雑音が聞かれることもあります。
このように聞かれるタイミング、音量、場所などから心雑音の原因を推測していきます。


★心雑音の原因★
 
心雑音の主な原因は、心臓内でなんらかの異常な血流が生じたせいです。本来逆流を止めるはずの心臓内の弁の閉まりが悪くなって血液が逆流したり、血液の通り道の一部が狭くなって流れにくくなってしまったり、右と左の部屋を隔てる壁に穴が開いていて通常とは異なる血液の交通が生じている場合などが考えられます。
例えば「僧帽弁閉鎖不全症」という病気は高齢のワンちゃんでよく聞かれる心雑音の原因です。年とともに変形・変質した僧帽弁がうまく閉じなくなってしまったために、弁の間に隙間ができてしまいます。そしてそこから血液が逆流するために収縮期雑音が聞かれるようになるのです。
もしも、生後まもない子犬や子猫で、初めての健康診断のときに心雑音が聞かれた場合には心房中隔欠損や動脈管開存といった生まれつきの心臓病や心臓の奇形が原因となっていることが多いでしょう。
また、心臓はその周りを心膜と呼ばれる薄い膜ですっぽりと覆われていますが、この膜が炎症をおこした時にも心音にかぶさるように雑音が聞かれるときがあります。

★もし心雑音が聞かれたら★

聴診器で心雑音が聞かれたからといって、それがすなわちすべて重篤な心臓病であるわけではありません。心雑音が聞かれても全く病気ではない場合もあり、逆に心臓病があっても心雑音が聞こえない場合もあります。ですから、もし心雑音が聞かれた場合には心電図やレントゲン検査、超音波検査などさらに精密な検査を行って診断をすすめていきます。ドップラーといって超音波検査の一種で心臓内の血液の流れる方向を調べることのできる検査や、心臓内まで細いカテーテルを挿入して造影剤を流してレントゲンで血液の流れを調べる心血管造影法などの検査方法もありますが、これらは全ての症例、動物病院でできるわけではないので、検査の方法については主治医の先生とよく相談しましょう。


心臓に雑音があります、と言われれば誰でもビックリしてしまいますよね。しかし、僧帽弁閉鎖不全症のように後天的に発生する心雑音で、もし早期に発見できればその進行をゆっくりにすることができる病気もあります。生まれつき心雑音のあるペットでも大きくなるにつれて雑音がなくなる場合もあります。大切なのは心雑音が見つかった後、どうすることがペットにとって最もよいことなのか、獣医さんと飼い主さんが十分納得するまで話し合うことだと思います。

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犬 猫 心雑音 高齢