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予防医学

おしっこでわかるペットの健康管理【予防医学】

私たち人もペットも定期健康診断をするときには通常尿検査を行いますよね。それだけおしっこが健康のバロメーターになることはもう皆さんご存知だと思います。通常尿検査を行うときには、私たちはペットのおしっこを採取して動物病院へ持って行き、獣医師に検査をお願いし、おしっこからは腎臓や肝臓など多くの内臓の健康状態を調べることができます。しかしペットの健康管理は数値で測るおしっこの内容だけでなく、日頃のおしっこの形状やおしっこの仕方もとても大切で、私たちがトイレの様子をおうちでよく観察することで病気を察知することができる場合もあります。


☆おしっことは☆
そもそもおしっことは、血液中の老廃物や毒素を腎臓でこしとり、水分と一緒に排出させたものです。つまりおしっこには、体内に不要なものや有害なものを溜めないようにするためと、体内の水分を常に一定に保つための2つの目的があるのです。
通常左右2つの腎臓で作られたおしっこは、それぞれの尿管を通って膀胱に集められ、一定量が溜まると尿道を通って体外に排出されます。


動物病院の尿検査でわかること
もし、おしっこの成分に何か異常がみられたらそれは体の中に何か異常なものが増えていることを示す場合と、おしっこの通り道(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に何か異常があることを示しています。男の子の場合、尿道の周りには前立腺があり、精巣は精管で尿道とつながっていますから、前立腺や精巣の異常がおしっこの異常として発見される場合もあり、女の子で避妊手術をしていない場合は、子宮からの出血や分泌物がおしっこに混じる場合もあります。
動物病院で検査する時は通常、おしっこを肉眼で見たのちに、試験紙を使って成分の異常を調べ、必要であればその後顕微鏡で尿中の異物を観察したり、細菌の培養検査をおこなうなどさらに詳しい検査をしていきます。


試験紙による尿検査の項目
病院には特別な試験紙があって、それに尿を滴下して化学反応による色調の変化を見ることによって尿の成分を調べていきます。主な検査項目は次の通りです。

・ 糖:おしっこで分かる体の異常として、皆さんが真っ先に思いつく病気はおそらく糖尿病でしょう。糖尿病は血液中の糖の値が高いため、おしっこの中にも糖が出てきてしまうために気がつきます。ペットの糖尿病は人以上に治療が困難で、早期発見がとても重要になります。
・ 潜血:潜血とはおしっこの中に含まれている血液のことです。試験紙を使うと目に見えないくらいの少量の出血でも有無を調べることができます。急性腎炎や膀胱炎、前立腺炎、尿路結石がある場合にそれぞれの臓器から出血し、潜血が見られます。
・ タンパク:本来血液中のタンパク質は腎臓で尿として排泄されることはありません。しかし腎臓の機能が低下したり、腎臓で対処しきれないほどの量のタンパク質が血液中に含まれるとおしっこの中に見られるようになることがあります。また発熱したり激しい運動をした後や、貧血や心臓の疾患があるときには尿中にタンパクが出ることがあります。
・ ビリルビン:ビリルビンは血液中の赤血球が肝臓で分解されてできるもので、通常胆汁として腸から体外に排泄されます。しかし、胆石のように胆汁がうまく流れなくなってしまった場合や肝臓の働きが弱まってビリルビンをうまく排泄できなくなった場合におしっこの中にビリルビンがみられるようになることがあります。
・ ケトン:ケトン体とは体内で脂肪をエネルギーとして利用しようとしたときに、肝臓で作られておしっことして排泄される物質です。糖尿病になると、血液中の糖をエネルギーとして使えなくなるため、脂肪をかわりに利用するようになり、そのためにケトン体が大量におしっこのなかにみられるようになります。
・ pH:健康なおしっこは中性から弱酸性です。しかし細菌感染をおこしているとおしっこはアルカリ性に偏ります。ペットが尿路結石になった場合、おしっこがアルカリ性ならばストラバイト結石という石ができやすくなります。
・ 尿比重:簡単にいってしまうとおしっこの濃さのことです。通常ワンちゃんやネコちゃんの尿比重は1.015〜1.050くらいですが、これよりも低い(おしっこが薄い)場合には腎機能の低下を、これよりも高い(おしっこが濃い)場合には脱水の心配があります。


おしっこの顕微鏡検査
おしっこのなかには通常固形物はほとんど含まれていません。しかし、病気が疑われる時には通常見られないものがおしっこの中に存在することがあり、それを顕微鏡で検査することがあります。

・ 尿路結石:ペットは比較的尿路結石になりやすく、もしなっていればおしっこのなかに結石特有のミネラルの結晶を顕微鏡で見ることができます。結晶の形をみることで結石の種類をある程度特定することができ、たとえばストラバイト結石は「金の延べ棒」のような立体的な台形をしています。
・ 細菌:おしっこは汚いというイメージがありますが、健康なおしっこは実は無菌です。しかし、膀胱炎などをおこしている場合には大腸菌などの細菌がおしっこの中で増殖していることがあります。細菌感染が疑われ、病原菌が何かを知りたい場合には、さらに細菌を培養して(最適な環境化で栄養を与えて細菌を増やす)菌を特定することもあります。
・ 細胞:おしっこのなかに血液が混じっている場合には赤血球や白血球といった血液中の細胞が見られることがあります。また、膀胱炎などで膀胱粘膜が傷ついている場合にはおしっこのなかに膀胱粘膜独特の細胞が認められることがあります。さらに膀胱ガンがある場合にはおしっこの中にガン細胞が認められることもあります。細胞を顕微鏡で観察するときには特殊な薬品で細胞に色をつける(染色)作業をしてから行います。
・ 尿円柱:尿円柱とは顕微鏡で見えるくらいの小さな円柱状のタンパク質の塊のことで、これがたくさんおしっこの中に見られるときには、糸球体腎炎などの腎臓の疾患が疑われます。


☆おうちでもできるおしっこで分かる病気☆
おしっこの検査は獣医師だけでなく飼い主である私たちも実は検査することができます。病院で尿の成分を調べてもらう前に、毎日おしっこをしているしぐさを観察したり、ペットシーツについているおしっこの様子に注意することで見つけられる病気もたくさんあることをご存知でしょうか。おうちでのおしっこの注意点は次の通りです。

おうちでもできる尿検査:おしっこの回数と量
ペットのおしっこの回数や量は体格や性別、年齢、ライフスタイルによって大きく異なります。ですから、正常なおしっこの量は○○ccを○回ということはできません。しかし、ふだんから「うちの子は一日に大体ペットシーツがこのくらい濡れる量を○回くらいする」というのを覚えておいて、急に多くなったり少なくなったりしたら、それは異常だといえます。たとえば、子宮蓄膿症になったワンちゃんは水を大量に飲むようになるため、薄いおしっこを大量にするようになります。また、膀胱炎をおこしたネコちゃんは短時間に何度もトイレに出入りしますが、一回の量はほんの少ししかでてきません。

おうちでもできる尿検査:おしっこの色とにおい
健康な時のおしっこは薄い黄色で、においはほとんどありません。水をたくさん飲んでたくさんおしっこをするときにはおしっこの色は薄くなり、逆に脱水症で体内に水分が足りない時にはおしっこの色は濃くなります。さらにおしっこに血が混じれば赤っぽくなり、細菌や異物が混じれば濁った色になりにおいもきつくなります。ネコちゃんによく見られる「下部尿路結石症」の時には細かな結晶が混じるため、おしっこは濁り、場合によっては膀胱粘膜からの出血で赤くなり、ペットシーツを触るとざらざらした感触がある場合もあります。傷ついた膀胱粘膜に細菌が感染した場合には細菌が作る物質のためにおしっこはとてもくさいにおいになります。

おうちでもできる尿検査:おしっこをするときのしぐさ
もし、トイレに座り込んでおしっこをしたいのだけれども出ない、というしぐさを繰り返しているようであれば、おしっこの出口を塞ぐ膀胱結石や前立腺肥大などが疑われるかもしれません。また、おしっこをしたあと頻繁にお尻を舐めているようであれば、おしっこをするときに尿道の結石が動くなど何らかの違和感を感じているのかもしれません。
さらに、おしっこの病気とは直接関係がありませんが、おしっこをしたくても後ろ足に力を入れられなかったり、腰が痛くて中腰の姿勢が辛いときには、ぎりぎりまでおしっこを我慢をしてしまう、完全にお尻を地面につけておしっこをする、という動作がみられることがあります。

おうちでもできる尿検査:おしりまわりの様子
あまり多い病気ではありませんが、ペットにもときおり自分の意思と関係がなくおしっこが少しずつ漏れでてきてしまうことがあります。これは「尿失禁」と呼ばれる病気で、尿道や膀胱の機能がうまく働いていない場合や何らかの神経障害がある場合に見られます。おしりまわりが常におしっこで濡れていたり、座っていた場所がおしっこで濡れていることで気がつきます。


食べる、動く、排泄するといった基本動作の中にはペットの健康状態を知るためのヒントがたくさん隠されています。ですから私たちはおしっこをする様子もペットの病気を早期発見するために日頃からよく観察するようにしましょう。そしておしっこをしたあとは汚れたペットシーツやネコ砂は速やかに片付ける必要がありますが、そのときに今一度よく確認し、普段と変わったことがないか調べてから始末する習慣をつけるようにしましょう。

キーワード

おしっこ 病気 子宮蓄膿症 膀胱炎