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筋骨格系

小さなワンちゃんに見られる関節疾患〜大腿骨骨頭壊死症について〜【筋骨格系 】

ワンちゃんが足を痛がる病気のなかで「大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)」と呼ばれる病気があります。この病気は別名「レッグペルテス」ともいい、後ろ足をとても痛がることで気がつく病気です。ちょっと難しい名前ですが、若い小型犬種に比較的多く見られる進行性の関節の病気ですから、これを機に是非この病気について知っておいてください。


☆大腿骨頭? 壊死?☆

病気の名前であまり漢字が続くと、よくわかりませんね。まず「大腿骨頭」について説明しましょう。大腿とは太もものことです。太ももには大腿骨という1本の太い骨があって、上方の末端は骨盤と股関節を作っています。この関節を作っている部分を大腿骨頭といい、つるりとした半球状になっています。そして接する骨盤側はそれをくるりと包み込むようにくぼんでいて関節が滑らかに動かせるようになっています。地面に対して垂直か水平かの違いはありますが、人の股関節と同じ構造です。

次に「壊死」について説明をしましょう。私たちを含めて動物の体はすべて細胞からできていますが、その細胞が局所的に死んでしまうことを壊死といいます。壊死を起こす原因はさまざまで、物理的に切断されたりつぶされたりすることが原因となる場合もあれば、細菌やウイルスの感染による場合や、酸素や栄養不足による場合などがあります。
大腿骨頭壊死症は別名を「大腿骨頭の虚血性(きょけつせい)壊死症」といい、大腿骨頭に血液がうまく流れなくなるため、その部分が栄養不足になってしまうことが原因といわれています。骨というと石のような無機質な感じがしますが、他の臓器と同じく生きた細胞からできており、血液からの栄養供給がないと死んでしまうのです。


☆大腿骨頭が壊死するとどうなっちゃうの?☆

生きている骨は常に生成と破壊を繰り返してその形を維持しています。ですから大腿骨頭が壊死してしまうと半球状だった大腿骨頭はしだいに形がつぶれて平べったくなり、同時にそれを受ける骨盤側のくぼみも浅くなってしまいます。股関節はちょっとした力でもはずれやすくなり脱臼したり、場合によっては弱くなった大腿骨頭が骨折してしまうこともあります。


どんな子に多いの?

この病気は若い小型犬に多くみられます。特にプードル、ヨークシャーテリア、ミニチュアシュナウザー、ウェストハイランド・ホワイトテリア、ミニチュアピンシェルなどの品種で4〜11ヶ月の成長期の子に発症しやすいと言われています。


☆どんな症状がみられるの?☆

大腿骨頭が変形してくるとワンちゃんは不安定な股関節に体重をかけるのを嫌がるようになり、さらに股関節がスムーズに動かなくなることから痛みが出て、後ろ足をひきずるようになったり、腰に触られたり後ろ足を広げることを嫌がるようになります。10〜13%の症例では両足に症状がみられるようですが、多くは片側の足のみに発症がみられます。片側の足を使わない状態が続くと、そちら側の筋肉が衰えて細くなってきてしまい、左右の足の太さが異なってきます。
骨の変形は徐々に進行していくため、通常は症状も徐々にあらわれていきますが、我慢強い子や変形の状態によってはある日突然に強い痛みを示すこともあるようです。



☆原因は?☆

残念ながら、なぜ大腿骨頭に血液の流れが悪くなるのか、詳しいメカニズムについては分かっていません。ただし、親から子に伝えられる遺伝病であることはわかっています。


☆治療法は?☆

まだ初期の場合は骨の変形が軽度であるため、運動を制限して関節に余計な力がかからないようにしたり、消炎剤を使って痛みを抑えて様子を見ることもありますが、この病気は進行性であるため、最終的には手術をして変形した部分を切除することが必要となる場合がほとんどです。
ワンちゃんは4本足であることとこの病気になるワンちゃんの多くは体重が軽い小型犬であることに加え、そもそも股関節の周りにはたくさんの筋肉があるため、適切なアプローチで手術をして筋肉を回復させるリハビリを行えば、多くの場合手術で骨頭を切除してしまっても再びその足で体重を支えて歩くことができるようになります。


☆おうちで注意することは?☆

この病気は骨をレントゲン撮影をしてみて、股関節に変形があるかどうかで診断していきますが、初期で変形がわずかな場合には画像だけでは診断がつかないことがあります。普段の生活で少しでも後ろ足をかばっていたり、触られるのを嫌がるそぶりが見られたらなるべく早く動物病院にその症状を詳しくお話するようにしましょう。
そしてもし、この病気を診断されたらなるべく股関節に負担をかけないように、激しい運動は控え、太らせないように注意しましょう。
また、この病気は遺伝性疾患ですから、発症してしまった子は繁殖に供しないようにしましょう。



ペットの変化は毎日ペットのことを見ている飼い主さんが一番よくわかるはずです。どんな病気の場合でも、ちょっとしたしぐさの違いを見逃さず、何か変化があればすぐに動物病院に相談するという姿勢が病気の早期発見、早期治療につながります。

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犬 小型 関節