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5月のColumn ☆春の予防☆

春は動物病院の季節です。いつも元気で病気とは全く縁のないペットでも、この時期だけは動物病院に連れて行く、という方も多いのではないでしょうか? それは春から始めるペットの予防がいくつかあるからです。もう行かれた方も、これから連れて行くという方も春に行う予防を確認してみましょう。


☆春の予防1:ノミやダニの外部寄生虫☆

温かくなってきたら始めないといけない予防と聞いて、まず真っ先に思いつくのはノミやダニなどの寄生虫です。確かに気温が上がってくると、虫を含めた生き物が活発に動き回るようになりますよね。そしてそれと同時になんだか体がむずむずしてくる子も多くなるようです。ノミは気温が13度以上になると活発に繁殖を繰り返すようになり、マダニはもっと低い温度から活動はしていますが、やはり気温が高くなると爆発的に繁殖をすることが知られています。
特に、アレルギーを持っている子はたとえ一匹の寄生でもひどい皮膚炎になってしまうことがあるため、ノミやマダニが発生する前に確実な駆除剤を使用して寄生を予防することが大切です。

ノミやマダニの予防としては、やはり動物病院で処方してもらう医薬品としての駆除剤が一番確実で安心です。最近は月に一回背中の皮膚に少量の液体状の薬品を垂らす、スポットオンタイプが主流となっていますが、使用する際には
・全量を確実に皮膚に浸透させること
・口の届かない(舐められない)場所に使用すること
・使用間隔を守ること
について十分気をつける必要があります。


☆春の予防2:狂犬病予防接種☆

ワンちゃんを飼っていらっしゃる方は、もう狂犬病予防接種のお葉書が届いて、注射を打ちに行かれたのではないでしょうか。狂犬病予防接種は唯一法律で打つことが定められているワンちゃんの予防接種です。狂犬病は今でこそ日本には存在していませんが、かつては年間に死者を何人も出す恐ろしい人畜共通感染症でした。それを法律で予防接種と飼い犬の登録を徹底することで今の狂犬病清浄国となったのです。しかし狂犬病は今でもお隣の中国他アメリカやヨーロッパではまだ見ることができ、世界レベルでは未だに脅威となっています。ですからいつ検疫の網の目をくぐって日本に入り込んでも不思議ではなく、万が一再び日本に入り込んだときに一番感染する可能性の高いワンちゃんに今でも予防接種と登録を行っているのです。

狂犬病予防接種は病気の予防と同時に、毎年保健所に登録を行うことでワンちゃんの住民票を作成するという意味もあります。ですから、たとえワンちゃんが迷子になってしまっても、もし予防接種初年度に交付してもらった鑑札を首輪につけておけば、そこに記載されている接種年度と市町村名、番号からどこに住んでいるだれそれの飼い犬ということが分かるようになっているのです。
たまにうちの子は人を噛んだりしないから狂犬病予防接種は必要ないわと言われる方もいらっしゃるようです。しかし、このように狂犬病予防接種はいざというときにとても大切なものですから、毎年必ず受けるようにしましょう。


春の予防3:混合ワクチン

混合ワクチンとはワンちゃんでもネコちゃんでも生後2ヶ月くらいから1ヵ月おきに数回、そのあとは年に1回ずつの追加接種になるため、本来は生まれた季節によって混合ワクチンの接種日はペットごとに異なります。しかし、やはり春先に生まれるペットは多いため、この時期に混合ワクチンを打つペットはたくさんいます。

混合ワクチン接種で予防することのできる病気は
ワンちゃんで犬アデノウイルス1型感染症および2型感染症、犬パルボウイルス感染症、犬パラインフルエンザ、犬ジステンパー、犬コロナウイルス感染症、レプトスピラ症です。
またネコちゃんでは猫ウイルス鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症、猫白血病ウイルス感染症、猫クラミジア感染症です。

同じ時期だからといって混合ワクチンと狂犬病ワクチンは同時に打つことができません。めったにあることではありませんが、もし副作用が出た場合にどちらが原因になっているのかが分からなくなってしまうのがその理由の一つです。狂犬病を接種したあとは最低1週間を空けてから混合ワクチンを打つようにしましょう。

春の予防4:フィラリア予防

フィラリアは蚊が媒介する恐ろしい寄生虫の病気です。
蚊が血を吸うときにワンちゃんの体内にもぐりこんだフィラリアは最終的に心臓内に到達し、そこでそうめんほどの大きさの成虫になってしまいます。もし心臓内で大きくなった成虫のフィラリアを殺してしまったら、その死体は心臓内や血管に詰まってしまい、血行障害や異物反応をおこしてしまうかもしれません。ですから、フィラリアは蚊から皮膚に入って血管内にもぐりむ前に殺す必要があります。よくフィラリア予防薬という言い方がされますが、実はフィラリアが体内に入るのを予防しているわけではなく、体内に入ったフィラリアが心臓に入らないようにするための薬なのです。蚊は気温が17度以上になると活発に血を吸うようになるため、そうなったらすぐにフィラリアの予防を始めるようにしましょう。

今まではフィラリア症はワンちゃんだけの病気だと思われていました。しかし、実はフィラリア症はネコちゃんでも起こりうる病気ということが分かってきました。ネコちゃんのフィラリア症はワンちゃんとは症状が異なり、嘔吐、咳、呼吸困難などの症状があらわれると急激に悪化して亡くなってしまったり、明らかな症状があらわれることなく急死してしまっていたことから、発見が遅れていたのです。体が小さいため、たとえ1匹の寄生でも命の危険があることから、ネコちゃんもフィラリアの予防を行ったほうがいいということになり、最近になってようやくネコちゃん用のフィラリア予防薬も動物病院で手に入るようになりました。
蚊が媒介することは同じなので、予防を開始する時期はやはり同じく今の季節からです。


春の予防5:健康診断

多くの動物病院では、春に年に一回の健康診断を推奨しています。それは、フィラリアの予防薬を始める時には必ず血液検査が必要で採血をしなければいけないことから、折角ペットに我慢してもらって採血をするのなら、少し多めに採って他にもいろいろ調べてみようとはじめられたことです。

健康診断の内容は各動物病院によって異なりますが、よく行われる検査としては次のようなものが挙げられます
・体温(直腸もしくは耳で測ります)
・体重(急激な体重変化は増加でも減少でも病気が疑われます)
・視診(目や耳や口の中、皮膚の状態などを見て異常がないか調べます)
・触診(体にしこりはないか、痛がる場所はないかなどを調べます)
・聴診(聴診器で心臓や肺の音を聞き、異常がないか調べます)
・尿検査(腎臓病や糖尿病、肝臓病などの有無を調べます)
・糞便検査(消化状態や消化管内寄生虫の有無などを調べます)
・血液検査(貧血や炎症の有無、肝臓や腎臓の状態、コレステロールや血糖値などを調べます)

健康診断で何も問題が見つからなくても、その結果はあくまで、いまのところ病気は見当たりませんというもので、今後病気にならないという保障ではありません。年に1回でも定期的に行うということがとても大切です。


春の予防6:避妊・去勢手術

ネコちゃんの場合、発情は日照時間と関係があるといわれています。春になって昼間の時間が長くなってくると女の子の発情が促されるのです。そして、女の子のフェロモンに誘われて男の子も大きな声を出したり、あちこちにスプレーと呼ばれる霧状のおしっこをひっかけて歩くようになります。これらの問題行動から春には避妊去勢手術の依頼が多くなります。

避妊去勢手術は性ホルモンによる問題行動を解決するだけでなく、卵巣・子宮・精巣といった生殖器の病気を予防することもできるといわれています。女の子の場合、発情が2回くる前に避妊手術をして卵巣を摘出してしまえば、明らかに乳腺腫になる確率を下げることができるというデータもあります。もし、おうちのペットの子供をとる予定がなければなるべく早く獣医師に避妊去勢手術の相談をすることをお勧めします。



春はあれもこれもしなくてはいけなくて、診察代や薬代とお金がかかってしまい、まとめてしまうと結構な金額になって大変だわ。という声をよく聞きます。しかし、逆に考えてみれば、春にすべてのことが済んでしまうのです。ペットにしてみれば、動物病院が好きなペットはあまりいないため、一回で全てを終らせることができるのは逆に望むところのはずです。
予防に勝る医療はありません。この季節に全て終らせてしまって、すっきりした気持ちでまた1年ペットと楽しく過ごしましょう。