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あなたのペットは痛いところがありませんか? 〜ペットの関節炎について〜【その他】

膝が関節炎をおこしていて歩くと痛い、スポーツをしすぎて肘が関節炎をおこしてしまった、など関節炎という病気は人でもよく聞きますね。実はペットも関節炎は非常によくみられる病気のひとつです。統計によると5頭に1頭のワンちゃんは関節炎をもっているといわれています。
しかし、ペットはちょっと痛いくらいでは我慢をして症状を示さないことが多く、4本足で歩くため歩き方の変化にも気づきにくいため、ひどくなってから慌ててしまうことも多いのが実情です。



☆関節炎とは☆

骨と骨の間には関節があって、体がスムーズに動くようになっています。関節は関節包と呼ばれる袋で囲まれて、中には潤滑油の役割を果たしている滑液で満たされています。関節となっているお互いの骨の表面は滑らかで弾力のある軟骨で覆われており、衝撃を吸収し、非常にスムーズに動くことができるつくりになっています。
それが高齢になって新陳代謝が衰えてきたり、肥満で常に関節に余計な負荷がかかっていたり、自己免疫性疾患や感染症になると、関節の表面が滑らかでなくなり、炎症細胞が集まって関節炎となるのです。


☆関節炎の症状☆

関節炎になると、その関節を動かす度に痛みが生じ、関節の可動域が狭くなります。関節炎をおこしやすい関節は主に足の関節か脊椎の関節なので、それらの関節を動かす動作を嫌がるようになります。
次のような症状が見られたら、関節の痛みを疑ってみましょう。

□お散歩に行きたがらなくなる
□お散歩の途中で座り込んで動かなくなる
□立ったり座ったりの動作をためらうようになる
□ジャンプをしなくなる、ジャンプをためらって止めてしまう
□歩く時に頭を下げて歩くようになる、背中をやや丸めてゆっくりと歩くようになる
□体を触られるのを嫌がる、体を触ろうとすると逃げたり怒ったりする
□腰を振りながら小股で歩くようになる
□4本の足を均等に使わなくなる、ケンケンで歩くようになる
□全体の動作がぎこちなくなる

などです。
また、常に体が痛いのでそのストレスから元気や食欲がなくなったり、イライラして神経質になることもあります。


主な関節炎をおこす病気1:膝蓋骨脱臼
膝のお皿の骨(膝蓋骨)が外れてしまうことを膝蓋骨脱臼といい、トイプードルやヨークシャーテリアなどの小型犬で多く見られます。中には生まれつきの骨格や靭帯のつき方で常に外れやすい子がいますが、その度合いがひどい場合には膝蓋骨は常にはずれたままになり、膝関節は変形をおこして関節炎をおこしてしまいます。後ろ足を曲げようとすると痛いため、ケンケンで歩いたり、爪先立つような姿勢で小股で歩いたりします。


主な関節炎をおこす病気2:股関節形成不全症
股関節形成不全症とは骨盤と大腿骨をつなぐ股関節が生まれつきしっかりとはまっていないため、不安定な関節の軟骨同士がぶつかって関節炎をおこす病気です。遺伝が関与しているといわれ、ラブラドールレトリバーのような大型犬・超大型犬でよくみられます。股関節を動かすと痛みが出るため、なるべく小股で腰を振って歩くようになり、その独特の歩き方はモンローウォークと呼ばれています。


主な関節炎をおこす病気3:リウマチ性関節炎
リウマチとは、本来は外部からの異物を攻撃する免疫反応が自らの体内のたん白質を攻撃するという異常によっておこります。原因はまだよくわかっていませんが、この病気になると左右対称性に関節炎が進行していきます。手根関節や膝関節、中手骨などの関節が炎症によって変形することが多く、進行をそのままにしておくと最終的には歩けなくなってしまいます。


主な関節炎をおこす病気4:変形性脊椎症
本来一つ一つが独立している脊椎同士の間に骨が橋をかけるように増殖して、進行するといくつかの脊椎がつながって固まってしまう病気です。椎間板ヘルニアも原因の一つと考えられていますが、高齢のワンちゃんに多いことから加齢による骨の変化によるものといわれています。脊椎がつながるだけではあまり症状を示しませんが、増殖した骨や椎間板が脊髄神経を圧迫するとしびれや麻痺の症状があらわれることがあります。

 
関節炎になってしまったらB群

もし関節炎の原因が骨の変形によるものである場合には、根本的な治療は外科手術しかありません。たとえば、変形してしまった股関節を人工関節に置換したり、膝蓋骨の脱臼を修復するために靭帯の付着部を付け替えたりといった手術です。
しかし関節部の手術は非常に困難であることが多いため、骨の変形がまだひどくなく、関節炎がまだ軽症の場合には内科的に消炎剤や軟骨を保護するサプリメント(コンドロイチン硫酸・グルコサミン)などを投与して、これ以上炎症が悪化しないようにして様子をみていきます。


関節炎の治療:消炎剤

ナイアシンは通常肉の中に入っているため、ワンちゃんやネコちゃんが欠乏症になることは稀ですが、野菜ばかりの手作り食を与えつづけた場合に口内炎や皮膚病をひきおこし、ネコちゃんの場合には命の危険を伴う事もあります。


関節炎の治療:消炎剤群

関節炎の治療で一番大切なことは炎症を抑えて痛みをとることですが、人と異なることは、ペットの場合外用薬が使えないということです。通常人であればまず痛い場所に湿布薬を貼ったり、消炎剤入りの軟膏を塗ったりします。しかし、ワンちゃんやネコちゃんは皮膚に何かが付着していることを非常に嫌いますし、塗り薬は舐めてしまいます。もし舐めてしまったら薬の効果はなくなってしまうのはもちろんですが、刺激性のある物質が入っている場合にはよだれが止まらなくなってしまうこともあります。ですから、ペットの場合消炎剤は注射薬や飲み薬で投与するしかありません。
しかし体内での代謝の違いから人で用いている消炎剤の中にはペットにとって毒となるものもあるため、使われる薬品や使用頻度は限られています。


おうちで気をつけること

動物病院で行われる治療のほかに関節炎をこれ以上ひどくしないためには、おうちでの管理が非常に重要になります。
室内飼いの子の場合は部屋の床材に気をつけましょう。滑りやすいフローリングの床材は足の関節に余計な負担をかけるだけでなく、転んで腰などを打つ可能性があるため、滑りにくいカーペットやコルク材などを敷いてあげといいでしょう。
段差の上り下りは足や脊椎の関節に負担をかけるので、お散歩のときにはなるべく避けるようにしましょう。室内の階段にはゲートをつけ、ベットなどの上り下りは人が手助けをするか、スロープをつけるようにしましょう。
また、寒いと関節の痛みは強まるので、保温には十分気を配り、体を冷やさないように冬のお散歩には防寒着を着せるとよいでしょう。

関節炎を悪化させるもの:肥満
余計な体重は体の各関節に大きな負担をかけます。支えきれないほどの重量が常に関節にかかることによって、軟骨はすり減り、変形していってしまいます。もともと太っている子が関節炎になるケースが多いのですが、関節炎になると体を動かすたびに痛みが生じることからペットはあまり動かなくなってしまいます。運動量が減ると消費エネルギーも少なくなりますから、ますます太りやすくなり、関節炎はもっと悪化していってしまうのです。食事療法による体重管理は関節炎の時にとても重要です。

関節炎を悪化させるもの:運動不足
痛がっているときには体を動かしてはいけないんじゃないの? と思われる方もたくさんいらっしゃると思います。確かに炎症を悪化させるような段差の上り下り、急激なダッシュや方向転換、ジャンプなどの無理な動作はさせてはいけません。しかし、もしまったく動かない生活をしていると筋肉はどんどん衰えてしまいます。筋肉は関節の前後周囲で安定して動かすサポートをする働きをしているため、もし筋肉が衰えてしまえば支持のない関節はますます不安定になってしまい、関節内の軟骨がぶつかり炎症を悪化させてしまいます。獣医師の指導のもとで軽いお散歩は毎日行ったほうがよいでしょう。さらにもしできるのであれば、無理のないマッサージやストレッチ、関節に負担をかけにくい水泳療法などを取り入れてみるのもいいでしょう。

関節炎を悪化させるもの:カルシウム
骨の病気を予防しようとしてカルシウムをたくさん摂ったほうがいいというのは大きな間違いです。特に成長期のワンちゃんにカルシウムを過剰に与えるとかえって骨の成長を妨げることが知られています。総合栄養食の子犬用フードにはすでに成長期に必要なカルシウムが含まれています。それにさらにカルシウム剤などを添加すると、骨が正しい形に成長しなかったり、関節を覆う軟骨の正常な接着を阻害してしまい、関節炎をおこしやすい関節をつくってしまうことがあります。



関節炎はよく聞く病気だし、急激な変化は見られないし、動きが悪くなるだけで命に別状がある病気じゃないから、としばらく様子をみられる飼い主さんもいます。しかしものを言わないペットにとって痛みというものは非常に強いストレスになります。痛みからご飯を食べなくなり、筋力や気力が衰えてしまい、病気に対する抵抗力が低下してしまいます。ペットの痛みのサインにはなるべく早く気が付き、対処してあげることがとても大切です。

キーワード

犬 関節炎