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遺伝性疾患とは? 【その他】

病気の原因は大きく遺伝によるものと環境によるものの2つに分けられます。ほとんどの病気はこの両方が関連していますが、主に遺伝だけが原因となる病気のことを、遺伝性疾患と言います。
では、遺伝がどのように病気の原因となるのでしょうか。具体的にはどのような病気があるのでしょうか。



☆遺伝とは☆

遺伝とは親から子へと形態や性質が受け継がれることです。ワンちゃんの親からは(ネコちゃんではなく)ワンちゃんが生まれ、親と子でなんとなく毛色や体つきが似ているのはこの遺伝によるものです。そして遺伝の設計図となるものを遺伝子といいます。


☆遺伝子とは☆

遺伝子は全ての細胞一つ一つにある、核という中に納められており、DNAという物質でできています。ペットや私たち哺乳類の体は、もともとお父さんとお母さんのDNAを半分ずつもらった一個の受精卵から作られています。ですから、お父さんとお母さんの形態や性質を半分ずつもらっていて、どちらにも少しずつ似ているのです。


☆遺伝子の現れ方☆

しかし、たとえばベージュのお父さん犬と黒いお母さん犬から生まれる子犬がみんなベージュと黒が半分ずつの毛色の子になるわけではありません。ある子犬はベージュで、ある子犬は黒というように分かれ、ときには両親どちらの色にも似ていないチョコレートカラーの子犬が生まれることもあります。これは遺伝子の現れ方というものが非常に複雑で、ある遺伝子が他の遺伝子を打ち消したり、お父さんとお母さんの遺伝子が揃うことで初めて形態を発現することなどがあるからです。


☆遺伝する病気☆

このように複雑に親から子へ受け継がれる形態の中には、病気と関連するあまり受け継がれて欲しくないものもあります。できれば受け継ぎたくない遺伝子によって、広がり発現する病気のことを、遺伝性疾患と総称しています。
遺伝性疾患は、よく近縁同士を掛け合わせて血が濃くなると出やすいといわれています。通常、遺伝性疾患の原因となる遺伝子は、お父さんとお母さんの型が揃うことで発現しますが、遺伝子の型が似ている近縁同士の方が揃いやすくなるためです。遺伝性疾患を発症したペットの子供が必ずしもみんな病気になるとは限りませんが、病気になりやすい遺伝子を持ち、それを広める可能性は秘めています。

遺伝性疾患の例:関節疾患
大型犬でよく見られる病気に、股関節形成不全症と呼ばれる病気があります。これは生まれつき股関節のくぼみが浅く、大腿骨が関節内にきちんと納まらないため、後足が非常に不安定となって関節炎や関節の変形、脱臼を引き起こすものです。診断にはレントゲン撮影が行われ、ひどい場合には外科手術による治療が必要な場合もあります。

遺伝性疾患の例:水頭症
小型の短頭犬種で比較的多く見られる脳の病気です。もともと脳は頭蓋骨という器の中で脳脊髄液と呼ばれる液体に囲まれて浮いているように存在しています。通常、脳脊髄液は一定量に保たれていますが、必要以上に作られたり一定量ずつ排泄されなくなったりすると、過剰になり脳を圧迫してきます。この状態を水頭症と呼びますが、生まれつきこのような状態になっている子がいます。脳への圧力がどんどん高くなり、ひどく圧迫するような場合には生命に危険が及ぶ場合もありますが、治療のための手術も非常にリスクが高く、たとえ手術が成功したとしても神経に障害が残ることがあります。

遺伝性疾患:陰睾
ワンちゃんでもネコちゃんでも男の子の場合、生まれたばかりのとき精巣は腹腔内に入っていて、成長するにつれて睾丸の袋の中に落ちてきます。これは、精巣にとって腹腔内は温度が高すぎて精子をうまく作ることが出来ないためといわれていますが、時折この移動がうまく行われず、精巣の片側もしくは両側が落ちてこない事があります。これを陰睾といいますが、これも遺伝性疾患といわれています。腹腔内に残ってしまった精巣はそのままにしておくと腫瘍化しやすいことが知られており、なるべく早く外科手術で切除してしまったほうがよいとされています。


☆遺伝性疾患を避けるために☆

遺伝性疾患を出さないためには、病気になる遺伝子を持つペットを繁殖に用いないことが最も大切な事です。また、純血種の繁殖でも近親交配は避け、なるべく血が濃くならないような繁殖計画をたてなくてはいけません。しかし、純血種は特定の品種を作り出す過程で、すでにある程度近親交配を繰り返しているため、何らかの遺伝性疾患は多かれ少なかれ持っていると思っていた方がいいかもしれません。


遺伝性疾患で生まれつきの病気であっても、治すことができるものもあります。また、知識を蓄積する事で病気になる可能性の高い組み合わせを避けて繁殖を行うこともできるようになってきました。ペットを飼う時にはペット個々の幸せと同時に、ワンちゃんやネコちゃん全体の将来についても少し考えてみましょう。

キーワード

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