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栄養学

ペットのために知っておきたい! なぜ牛乳を飲ませると下痢するの?【栄養学】

犬が牛乳を飲むと下痢をするのは、牛乳に含まれる乳糖を分解する能力が低いからです。
あまり与えないようにしましょう。
ヨーグルトやカッテージチーズならまず大丈夫です。



★初乳の大切さを知る★

出産という生命の誕生の神秘と感激の直後から「子育て」がスタートします。母子双方のファーストタッチともなる授乳は、医学的にも心理学的にも非常に重要なステージとなります。生まれたばかりの仔犬や仔猫は、病気に対して「無防備」の状態となっています。そこで乳腺で作られた初乳(生後2〜3日以内の母乳)を飲むことによって、多くの免疫を獲得し、病原体などから身を守ります。

人間の乳幼児では生後10ヶ月を過ぎると母子免疫の効果もほぼ消失するといわれています。従って人間では「秋に生まれる赤ちゃんは風邪をひかない」という言葉があります。これは秋に生まれると初乳を飲むことによって獲得した「免疫」が十分間残っており、冬に風邪をひかずにすむということです。逆に春に生まれた赤ちゃんは、「免疫切れ」のように冬に風邪をひきやすいという意味に繋がります。

ちなみに犬や猫では母乳(初乳)を飲むことによって免疫が2〜3ヶ月(8〜14週)持続すると言われています。


★初乳の力★

初乳に含まれる身を守る武器の1つに「ラクトフェリン」という成分があります。

「ラクトフェリン」=「ラクト(=ミルク)」+「フェリン(=鉄を運ぶもの)」

つまりラクトフェリンは鉄分と結合しやすい特質があり、細菌やウイルスが生きていくために必要な鉄分を「ラクトフェリン」が奪うため細菌やウイルスは生きていけなくなるのです。

腸内の悪玉菌は発育に鉄分が必要ですが、乳酸菌などの善玉菌は鉄分をあまり要求しません。従って「ラクトフェリン」は細菌やウイルスに対して効果的ということだけではなく、腸内細菌のバランスを崩すことがなく整腸作用も期待できるのです。

すべての哺乳類において生後数日間の母乳を摂取することは親子の精神的な絆を深めるために重要であるというだけではなく、肉体的にも未然に感染から身をも守るという目的を達成するために必須となります。しかしながら体質は様々です。

例え自分の母親の母乳であっても摂取後に仔犬や仔猫が下痢をすることがありますので、免疫の少ない頃は細かく様子をチェックしましょう。


★乳糖不耐症による下痢とは★

小腸内で乳糖分解酵素(別名:ラクターゼ)が十分に作られないために、牛乳や乳製品に多く含まれる乳糖を分解することができないことにより下痢をすることを乳糖不耐症といいます。乳糖分解酵素は主に哺乳動物だけの乳腺より分泌される乳汁中にある成分です。今後の全ての話に繋がりますが、全ては「乳糖分解酵素が分解できる乳糖の量」が鍵となります。

一般に、動物は母乳の中に含まれる乳糖の量を分解できるだけの乳糖分解酵素を分泌することができます。

母乳に含まれる乳糖の割合は動物種によって様々で、牛乳に含まれる乳糖は約5.0%(カッテージチーズは2.5〜3%)、ヤギのミルクは4.1%、そして雌犬(授乳中の雌犬)のミルクは3.1%、授乳中の雌猫のミルクは4.2%、人間のミルクは9%です。

乳児期までは、小腸の粘膜で乳糖分解酵素が作られるため母乳を飲んでも平気です。


★下痢する原因とは★

離乳期を過ぎると乳糖分解酵素の分泌が停止します。この現象はヒトに限らず犬や猫も含め、哺乳動物全般に共通する現象です。つまり犬も猫でも成長すると共に乳糖を分解するという乳糖分解酵素が減少するのです。従って単純に仔犬や子猫がそれ以上の乳糖を接取することで、乳糖のほとんどが分解(消化)されないので下痢をします。


★乳糖はどこで分解されるの?★
 
今までお話しした内容はよく知られている内容ですが、なぜ乳糖が分解されないと下痢をするのか説明しましょう。

まず乳糖がどのような経路を通って体内で消化吸収されるかを理解する必要があります。基本的に乳糖は胃では吸収されず小腸に移ります。通常であれば小腸の粘膜上皮には乳糖分解酵素が存在し、この酵素によって乳糖はブドウ糖とガラクトースに分解され初めて腸管から体内に吸収されます。

もし牛乳に含まれる乳糖が分解・吸収されないと、乳糖は腸管を通過し大腸に移動します。大腸では各種の腸内細菌が繁殖しており、乳糖はこれらの菌によって発酵を受け、腸管内から腸管壁に吸収されるべき水分が乳糖と一緒に残り、腸管の運動が活発になることによって下痢を引き起こします。

ある研究によると犬では体重1kg当たり20ml以上の牛乳を飲ませると下痢をすると言われていますが、個体差があり、大量に飲んでも平気な子もいれば、少量の牛乳を舐めただけでも下痢になってしまうケースもあります。


★牛乳をホットにすると?★

牛乳を加熱して「ホットミルク」にすれば乳糖が分解されてペットも下痢をする確率が下がると考えられがちですが、残念ながら沸騰させた牛乳でもスキムミルクでも乳糖は分解されません。低温殺菌牛乳でもバターミルクでも乳糖は分解されません。

従ってペットが牛乳を飲んで下痢する場合は量を控えるか全く与えないことが対策となります。


★乳糖不耐症の子に与えても良い牛乳以外の代用乳とは?★

牛乳を原料とする乳製品には、製法によってほとんど乳糖を含まないものがあります。

少しだけ牛乳の説明をします。牛乳のたんぱく質の成分はほとんどがカゼインで、残りはホエーと呼ばれるたんぱく質です。ガゼインは酸や凝乳酵素で固まりますが、ホエーは加熱すると固まります。つまりホットミルクで出来る膜はホエーです。

カッテージチーズや低温滅菌したヨーグルトは、乳中のたんぱく質、脂肪、カルシウム、ビタミンAのほとんどが残っていて、製造の過程においてホエーと一緒に乳糖が除去されているので乳糖不耐症のペットには有効かもしれません。特にカッテージチーズは低脂肪なので下痢をしているペットにも安心だといえます。後ほど、「自宅で出来るカッテージチーズの作り方」をご紹介します。

仔犬や仔猫に牛の母乳を与えて問題が発生する場合は、ヤギのミルクを与えてみると良いかもしれません。ヤギのミルクは牛乳に比べ消化性が高く、牛乳より乳糖が少ないからです。ヤギミルクは極めて人間の母乳に近く、人間の牛乳に対するアレルギー反応の原因となるカゼインが微量であることから、人医領域において牛乳アレルギー患者のための代替乳として利用できる可能性が報告されています。

ヨーグルトや乳酸菌飲料などの発酵乳製品に含まれる乳糖は、製造の過程で乳酸菌のもつ乳糖分解酵素によって乳糖の一部が乳酸に分解されるので、乳糖不耐症の犬や猫でも下痢に関してはあまり心配する必要はないかもしれません。実際、原因は完全に解明されていませんが、乳糖不耐症の人がヨーグルトを食べても、牛乳で経験するような下痢や腹痛を訴えることが少ないといえます。


★自宅で出来る犬と猫のためのカッテージチーズの作り方★

耐熱ボールに牛乳を入れて沸騰しないように温める(50℃〜60℃がベスト)。
温まった牛乳を火からおろし、3〜5分待ち冷めたら(40℃)レモン汁を入れます。
固形物と水分に分離するので、ザルにキッチンペーパーや布巾を敷き、液をあけてこします。(自然に水分が落ちるのを待つ。)
※レモンの代わりに酸として酢やアップルサイダーヴィネガー(リンゴ酢)を入れた場合匂いが気になるのでペーパタオルに包んだままのチーズを水洗いします。
キッチンペーパーに残ったものを巾着状に閉じて持ち上げ、水分を滴り落とし、液を軽くしぼります(あまり強くしぼるとパサパサになります)。
ふきんの中に残った白いものがカッテージチーズです。


★おわりに★

犬は「本籍」が肉食で、「現住所」が雑食の動物です。猫は「本籍」が肉食で「現住所」も肉食の動物です。牛乳には多くの栄養が含まれていますが、犬や猫が必要とする栄養成分とは若干異なります。

しかしそれは牛乳が仔犬や仔猫にとって不健康であるということを意味するわけではありません。逆に乳糖に耐えられる犬や猫にとって、牛乳はエネルギー、たんぱく質、脂肪、炭水化物、カルシウム、リン、ビタミンA、ビタミンB複合体、微量元素などの生きていくために必要な栄養素が豊富で、子犬や仔猫の成長には優れた食事となります。

犬や猫は、良質なペットフードと水だけで十分な発育が期待できます。
しかしながら今回のお話で、少しでも何かをしてあげたいと思う飼い主さんの気になる“牛乳による下痢”に対する悩みが解けたのではないでしょうか。

キーワード

犬 初乳 牛乳 下痢 ホットミルク ヨーグルト チーズ