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泌尿生殖器

ホルモンと病気 [泌尿生殖器]

皆さんは、ホルモンという言葉を聞いたことがあると思いますが、体の中のどこで作られてどんな仕事をしているか、ご存知でしょうか?
割と簡単に、ホルモンバランスが崩れてしまって・・・や、ホルモンの病気で・・・という言葉を使いますが、実はホルモンはとっても複雑なものなのです。



★ホルモンとは★

ホルモンという言葉はそもそもギリシャ語の(hormaein)、興奮させるものという言葉から由来しています。ホルモンとは動物の体内のある器官で作られ、作られた器官から分泌されると血液に乗って体内に広がり、ほんの微量で、別の器官でその効果を発揮させる働きがある生理活性物質の総称です。体の中に分泌する物質である事から、内分泌とよばれることもあります。具体的には体の各臓器のバランスを取って健康を維持したり、エネルギー代謝を調整したり、発育と成長、性に関することなどに働いています。


★ホルモンの仕組み★

ホルモンはアミノ酸や脂肪酸でできていて、それぞれ作られる場所は決まっています。そして作用する側の器官には、ホルモン受容体と呼ばれるものが存在していて、運ばれてきたホルモンを少量でもきちんとキャッチできるようになっています。ホルモンとホルモン受容体がくっつくとスイッチが入ったようになり、作用する側の器官の細胞で決まった働きがスタートします。
Aというホルモンに対してはA受容体しかくっつくことができません。ホルモンの種類とそれを受け取る側には1対1の関係があって、関係のないホルモンを受け取って命令を読み間違えたりしないような仕組みが整っています。
体内のいろいろな調整をしているため、現在人では100種類近くのホルモンが見つかっています。


★ホルモンを分泌する器官★

ホルモンはさまざまな場所で作られますが、主なホルモンを分泌する器官は内分泌臓器と呼ばれ、次のようなものがあります。

【脳下垂体(のうかすいたい)】
脳下垂体は別名下垂体とも呼ばれ、脳の真下にぶらさがっているように存在する小さな器官です。
多くの種類のホルモンを分泌していますが、主なものとしては

・副腎皮質刺激ホルモン(副腎皮質ホルモンを分泌しなさい、と命令するホルモン)
・甲状腺刺激ホルモン(甲状腺ホルモンを分泌しなさい、と命令するホルモン)
・性腺刺激ホルモン(卵巣や精巣にホルモンを分泌しなさい、と命令するホルモン)
・成長ホルモン(体の細胞分裂を盛んにして、体を成長させるホルモン)
・抗利尿ホルモン(腎臓の水分吸収を促進させて、体内の水分を保持するホルモン)


などがあります。

【甲状腺】
甲状腺は人で言う、のどぼとけのすぐ近く、首の上のほうの気管を取り囲むように蝶型に張り付いている器官です。
甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌され、体の成長や新陳代謝を調整する働きをしています。

【副腎】
副腎は左右の腎臓の頭側にある器官で、二層構造をしています。表層のほうを副腎皮質、内側のほうを副腎髄質と呼び、それぞれ異なるホルモンを分泌しています。

副腎皮質からは

・糖質コルチコイド
・鉱質コルチコイド


というホルモンを分泌し、炭水化物、脂肪、たん白質の代謝を調節したり、炎症をおさえたり、ナトリウムやカリウムなどの電解質を調節したりする働きがあります。

一方副腎髄質からは神経を刺激する

・エピネフリン
・ノルエピネフリン


が分泌されており、主にストレスに対する反応を調節しています。

【膵臓】
膵臓は胃の真下に位置する平べったい臓器で、消化酵素を十二指腸に分泌する働きもしていますが、

・インスリン
・グルカゴン


といった血糖値を上げたり下げたりするホルモンも分泌しています。

【卵巣】
メスの動物の場合、卵巣から生殖に関するホルモン、人の場合女性ホルモンとも呼ばれる

・エストロゲン
・プロゲステロン


といったホルモンが分泌され、発情、妊娠、出産といったことに関与しています。

【精巣(睾丸)】
オスの動物の場合は、人の男性ホルモンと呼ばれる

・アンドロゲン
・テストステロン


といったホルモンが分泌され、発情などに関与しています。


★ホルモンの病気★

このようにホルモンは体内で微妙な調節をとるためのものですから、通常は一定濃度に保たれており、多すぎても少なすぎても病気になってしまいます。
たとえば、ホルモンを分泌する器官が腫瘍になって細胞が異常に増えてしまうとホルモンが過剰になってしまいます。逆に、なんらかの原因で分泌器官が破壊されてしまうと、ホルモンが少なくなってしまい、どちらの場合も生体に異常をきたしてしまいます。

次にペットによく見られるホルモンの病気をいくつか見ていきましょう。


★甲状腺機能低下症★

高齢犬で最も多いホルモン疾患の一つが甲状腺機能低下症です。犬の甲状腺機能低下症の95%が甲状腺自体の機能不全(原発性)が原因と言われています。
甲状腺ホルモンは全身の細胞のエネルギー代謝に作用しており、全身の細胞が元気にさかんに活動するために必要不可欠なホルモンです。ですからこのホルモンが欠乏すると身体の活動や皮膚の新陳代謝などに影響を及ぼします。具体的には

・無気力になる、寝てばかりいる
・食べていないのにどんどん太る
・皮膚がカサカサして、細菌感染をおこしやすくなる。毛が抜ける。
・脈がゆっくりになる


などがみられます。多くの症状が加齢に伴う症状に似ているため、見逃される事もあります。


★クッシング症候群★

副腎皮質ホルモンの過剰症をクッシング症候群といい、犬で比較的よく見られる疾患です。腫瘍などで副腎皮質が増加した場合の原発性と、皮膚病などの治療で副腎皮質ホルモン(ステロイド)を長期投与した場合の医源性があります。
副腎皮質ホルモンは体の代謝に関するホルモンなので、過剰になるとごはんを際限なく食べ、水を飲む量が増え、それに伴いおしっこの量も増えます。さらに症状が進行すると皮膚が薄くなって毛が対称的に抜け、無気力になってしまうこともあります。


★糖尿病★

糖尿病は膵臓から分泌されるインシュリンというホルモンが不足する事によって引き起こされる病気です。インシュリンは細胞が血液中の糖を吸収するのに働くホルモンで、これが不足すると、血中の糖はたくさんあるのに、体に取り込まれないので食べても食べてもどんどん痩せていってしまいます。水を飲む量とおしっこの量が増えて、悪化すると血中のケトンと呼ばれる有毒物質が増えるために、昏睡状態になってしまう事もあります。


★ホルモンの病気の診断★

多くのホルモンの病気の場合、症状だけでそれと鑑別するのは難しいため、確定診断をするためには血液検査を行います。
血液検査では血中のホルモン量を測定して減少や増加をしていないか検査を行っていきます。
また刺激試験といって、ホルモンを分泌させる薬品を人工的に投与して実際にホルモンがどのくらい出ているかを血液検査で測定することによって、分泌臓器がきちんと働いているかどうかを調べることもあります。


★ホルモンの病気の治療★

ホルモンの病気の場合、もし減少している事がわかったら、足りない分のホルモンを薬として補充してあげればよいことになります。原因によって薬は一時的なもので済む場合と、一生投与しつづけなければならない場合があるため、治療方法に関しては獣医師としっかり話し合うようにしましょう。
ホルモン過剰症の場合には、原因となる腫瘍などを根本治療するしか方法がなく、根治は難しいことが多いようです。


ホルモンのバランス、という言葉をよく使いますが、まさにホルモンは体のバランスをとるために絶妙なバランスで働いている物質です。ですから、もしホルモンの病気になったとしても、その症状はとても微妙である事が多く、診断が難しい病気です。普段からおうちのペットをよく観察して、少しでも変わったことがあれば早めに動物病院に相談することがとても大切です。

キーワード

ホルモン 糖尿病 副腎