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消化器

巨大食道症とは? [消化器]

食道が巨大になっちゃうってどういうこと?どんな症状で一体何が原因なんだろう?そんな気になるところをお答えします。


☆はじめに☆

ご飯を食べると、口から入った食べ物は胸の中を食道を経て胃へと運ばれます。食道は蠕動運動(ぜんどううんどう)と呼ばれる収縮運動を行って食べ物を後ろへ送っています。しかし、この食道の部分がだらん、と伸びきって食べ物を胃にうまく運べなくなってしまう状態のことを「巨大食道症」といいます。あまり多い病気ではありませんが、生まれつきの病気や他の病気がきっかけでおきることがあります。


☆ペットの食道は水平方向☆

二本足で立っている私たち人の食道は垂直方向ですが、四本足のペットの場合、口から胃を結ぶ食道は水平方向に走行しています。ですから、もし食道に力が入らなくなって伸びきってしまうと、食べたものは胃までうまく運ばれずに、途中で滞ってしまいます。たとえば雨どいを想像してみましょう。もし雨どいが柔らかいビニールシートでできていたら、雨水は途中に溜まり、その重さでビニールシートの一部はぼよよん、と垂れ下がってしまいますよね。それと同じことが胸の中でおきてしまうのです。


☆症状は?☆

食道に溜まって胃になかなか送られない食べ物や水を吐いてしまうのが主な症状です。胃の中に入っているものを吐くよりも、食べてすぐ、噴き出すように吐くのが特徴です。食べても食べても吐いてしまうため、体はどんどん衰弱して痩せていってしまいます。また、何度も吐いてしまうため、吐いたものが肺のほうに入り込んで肺炎の原因となり、咳をしたり発熱がみられることもあります。


☆原因は?☆

大きく生まれつき(先天性)の原因と、何らかの病気や事故が原因の場合(後天性)の場合があります。
先天性の場合、多くは食道の神経や筋肉などに異常があるようですが、詳しい原因はまだ分かっていません。また、誕生と同時になくなるはずの血管が食道の根元を取り囲むように残ってしまい、そのせいで絞り込まれた食道の手前に食べ物がいつでも溜まるようになり、次第に広がってきてしまう病気(右大動脈弓遺残症)が原因となることもあり、特に離乳し始めて固形物を食べ始めると頻繁に吐くようになって気が付くことが多いようです。
後天性の場合は、ホルモンの異常、怪我や病気などによる筋肉や神経の異常、重症筋無力症、腫瘍などが考えられます。


☆診断は?☆

どのようなときもそうですが、ペットが吐いた時には、かならず吐いたものを持って動物病院に連れて行きましょう。何を吐いたかによってそれが胃からのものか、食道からのものであるか判別できる場合があるからです。何度も食道から食べ物が出てきてしまうと判断されたときには、次にレントゲンを撮って実際に食道が広がっているかどうか調べます。まだあまり大きく広がっていない時にはバリウムを飲んで食道の輪郭を明らかにする事もあります。


☆治療法は?☆

食道以外の部分が原因である場合は、それを取除けば治る事があります。たとえば、ホルモンが原因(甲状腺機能低下症)の場合は、そのホルモン(甲状腺ホルモン)を補う事によって直ることがあります。また、右大動脈弓遺残症の場合は食道を締めこんでいる血管を除去する手術を行います。(ただし胸を開ける大手術となるため、専門の技術を持った動物病院で行う必要があります)
しかし、明らかな原因がわからない場合は効果的な治療法がないこともあります。食道の蠕動運動を促すような薬を使っても効果が見られないことがあり、そのような時には、胃にチューブを通したり、胃に窓を開けて直接流動食を入れて、栄養を維持するようにすることもあります。


☆おうちでの管理☆

巨大食道症のペットは、毎日の食餌の食べさせ方が最も大切な管理となります。なるべくスムーズに食道を通過するような高カロリーの流動食を少量ずつ与えるようにして、食餌中、食後しばらくはなるべく食道を垂直に維持することによって、食道に食べ物を溜まりにくくするのです。具体的にはご飯を食べさせるときには、階段の途中に食器を置いて後足より前足が高くなるようにしたり、ペットサークルの縁に足をかけさせながらご飯を食べさせるといった工夫をします。また食後しばらくはおうちの人が縦にだっこするのもよい方法です。


☆おわりに☆

巨大食道症は時間が経つにつれて悪化してしまう病気です。食道に食べ物が溜まるようになるとそれだけで食道炎をおこし、ますます動きが悪くなってしまいます。栄養状態もどんどん悪くなり、手術などの治療に堪えられない体になってしまいます。ペットが何度も吐く時、とくに幼いペットの場合はなるべく早く動物病院で診察を受けるようにしましょう。

キーワード

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