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消化器

体の中の肝心かなめ 〜肝臓って何するところ?〜 [消化器]

肝臓という臓器がお腹の中にあって、そこが病気になると非常に困った事になる、ということはみなさんも何となくご存知ですね。肝炎や肝硬変などという病気の名前もどこかで聞いたことがあるとおもいます。肝心かなめ、というくらい、肝臓は体の中でとても重要な部位です。
今回はこのペットの肝臓について、詳しくお話をしていきたいとおもいます。



☆肝臓の位置☆

肝臓は横隔膜のすぐうしろ、胃の前にある、分厚い“きのこのかさ”のような形をした臓器です。肋骨に覆われている部分なので外から触ることは出来ず、通常はそこから動く事もありません。


☆肝臓の働き☆

肝臓はさまざまな働きがあり、一つの臓器で300以上の働きをしているともいわれていますが、主な働きは次の通りです。

・腸管から取り入れた栄養の代謝

肝臓には肝動脈の他に門脈と呼ばれる腸管から吸収された栄養を取り入れる動脈があります。食べ物で取り入れられたたん白質はアミノ酸に消化され肝臓まで運ばれますが、ここで再びたん白質に合成され、体を作るもととなります。また、糖や脂肪をグリコーゲンとして貯蔵し、体の中で欠乏した時に再びブドウ糖を合成して血糖値を一定に保つ働きも担っています。これらの分解、合成を行なう時には熱が発生し、体温を維持する元にもなっています

・解毒

体に取り入れられた、もしくは体内で作られた毒素を無毒化しています。たとえば、腸内細菌によって作られたアンモニアは生体にとっては猛毒ですが、それを尿素に変換して排泄しやすい形にしています。

・血液の貯蔵、血液成分の破壊と合成

肝臓はいわば血液が十分に染み込んだスポンジのようなものです。通常は余分な血液を貯蔵し、足りなくなると放出するという、循環量の調節を行なっています。さらに古くなった赤血球を破壊し、使えるものは再び赤血球の原料とし、捨てるものに関しては胆汁の原料としています。


☆消化作用☆

胆汁はいったん胆嚢に貯められ、消化液として胆管から十二指腸へ排出されます。食べ物中の脂肪を細かく乳化して、膵臓の消化酵素を働きやすくする作用があります。


☆ペットの肝臓の病気☆

私たちが肝臓の病気というと、真っ先に“お酒の飲みすぎ”という原因が思い浮かぶかもしれません。そして、ペットはお酒なんか飲まないのに肝臓が悪くなるのかしら? と思う方もいらっしゃるでしょう。しかしペットの肝臓はさまざまな原因で病気になります。


・ウイルスや細菌による感染症

ワンちゃんで最も代表的なのは犬伝染性肝炎と呼ばれるウイルスが原因の感染症です。今はワクチンの普及で大分発症数が減りましたが、それでも時折子犬が肝炎を起こして死亡してしまう例があります。ネコちゃんでは同じくウイルスが原因となる猫伝染性腹膜炎が肝臓を冒す伝染病として知られています。この病気にはまだワクチンがないため、一度発症してしまうと致命的です。
そのほかにも、十二指腸に開口している胆管から細菌が肝臓に入り込み、炎症や膿瘍を起こすことも知られています。

・腫瘍

ペットの寿命が伸びたことにより、全身の腫瘍の発生率があがっています。肝臓の腫瘍もそのうちのひとつです。肝臓本体が腫瘍化する場合と、体のほかの部分で出来た腫瘍が転移してくる場合があります。

・栄養の偏り

肝臓は体の栄養を一時的に貯めておくところですから、もし、必要以上の栄養を与えつづけると肝臓に脂肪が蓄積した状態(脂肪肝)になってしまい、脂肪に圧迫された肝細胞は次第に壊されて肝硬変(肝臓が硬く萎縮し、壊れていく病気)になってしまうこともあります。太った猫が急にご飯を食べなくなると、体の脂肪が一気に肝臓にあつまり、脂肪肝(肝リピドーシス)になると言われています。

・先天的な異常

血管走行の奇形によって消化管から肝臓に入る門脈の血液が肝臓を通らないで全身に流れてしまう病気がまれに見られます。“門脈シャント”と呼ばれるこの病気によって、血液中の毒素が全身に回ってしまったり、消化吸収した栄養を体内に取り込めない、などの害がでてきます。
 

☆肝臓病の検査☆
肝臓の異常が疑われる時には次のような検査を行なって、確認をしていきます。

・血液検査

血液生化学の数値や貧血の有無などを確認します。もし、胆汁がうまく排泄されないときには血清が黄色くなり“黄疸”といわれる症状が見られます。

・画像検査

最も分かりやすいのはエコー(超音波)検査です。エコーは肝臓の内部構造をみるだけでなく、病気と思われる場所に針を刺して細胞の一部を取り出して顕微鏡で観察する“肝生検”のガイドとしての役割もあります。そのほかにレントゲン検査やCTなどでも異常が見つかる事があります。

・腹水の有無

肝臓が病気になると、その表面から腹水が漏れ出てきます。少量では分かりませんが、大量に貯留するとお腹がタプタプと太鼓腹になってきます。


肝臓はいわゆる体内の一大工業地帯です。とても重要な臓器なので、多少壊されても再生能力があり、よほど悪くならないと外に症状が出てきません。ですから、別名“沈黙の臓器”と呼ばれることもあります。しかし、あまりにたくさんの仕事をしているため、本当に壊れてしまった時に人工で代用は効きません。肝臓を健やかに保つためには栄養バランスに気を配り、定期健康診断を受けて病気の早期発見早期治療が一番です。

キーワード

肝臓 腫瘍 腹水 解毒 脂肪肝