獣医師や看護師が贈るペットコラム
獣医師や看護師が贈る
ペットコラム

いつでも元気にいて欲しいからここからコラムをお届けします

ペットクリニックHOME » 病気と予防 » 一覧 » 停留睾丸(ていりゅうこうがん)について [泌尿生殖器]

泌尿生殖器

停留睾丸(ていりゅうこうがん)について [泌尿生殖器]

停留睾丸(ていりゅうこうがん)とはあまり聞きなれない言葉かもしれません。
しかし、男の子のペットを飼われている方で、去勢手術をお願いしようと思ったら、タマタマが1個しかなかった、という話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。このように男の子のペットが性成熟に達しても(大人になっても)、精巣の片方、または両方が体の外に降りてこないことを、停留睾丸または陰睾(いんこう)、潜在睾丸(せんざいこうがん)と呼びます。



☆精巣がおりてくるしくみ☆

精巣はまだペットがお母さんのお腹の中にいるときには、腹腔内の腎臓のそばにあります。陰嚢(いんのう)と呼ばれる本来精巣を納めておく体の外にある袋と精巣は、精巣導滞(せいそうどうたい)というヒモのような組織でつながっており、成長するにつれてこのヒモは縮んできます。ヒモをたぐって精巣は脚の付け根の鼠径管という道を通り、陰嚢に向かって下降していきます。そして多くのペットではだいたい生後1ヶ月くらいに精巣は陰嚢の中に収まります。しかし、この精巣の下降が何らかの問題から途中で停まってしまったものが停留睾丸です。精巣は完全に腹腔内にあることもあれば、途中の鼠径管にひっかかっていて股の付け根のところで確認される事もあります。データ的には右側のほうがひっかかることが多いようです。
原因はホルモン障害などによると言われていますが、はっきりとしたことはまだわかっていません。


☆なぜおりてくるのでしょうか☆

陰嚢は皮膚1枚だけの袋で直接外気にさらされているため、その中はお腹の中に比べて、2〜3度低くなっています。もし、精巣がお腹の中にありつづければ、常に高い温度の中にいることになります。高い温度環境にある精巣は精子を作る機能が徐々に阻害され、精巣は小さく萎縮していってしまいます。つまり、精子を作るためには体温よりも低い温度であることが必要であるため、お腹の中から外へおりてくるのです。
また、精巣が腹腔内にあると精巣が腫瘍になりやすくなるといわれています。データでは通常の10倍近く精巣腫瘍の発生率が高くなるといわれています。


☆精巣の腫瘍化☆

精巣の腫瘍には、その原因となる細胞の種類によりセルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫の三種があります。さきほど、停留睾丸になってしまうと、腫瘍になりやすくなるとお話をしましたが、具体的にはこれら3つの中で特にセルトリ細胞腫の発生率が高くなります。
もし、腫瘍化してしまうと、精巣はどんどん大きくなり、他の組織を圧迫するようになります。また、大きくなった分、性ホルモンも大量に分泌するようになり、特にセルトリ細胞腫の場合、エストロジェンというホルモンが大量に分泌されるのせいで脱毛や皮膚炎がおきたり、ホルモンバランスの異常によりおっぱいが腫れてしまう(妊娠している女の子っぽくなる)こともあります。重症になると貧血がおきることもあり、腫瘍がリンパ節や他の臓器に転移してしまい、手遅れになってしまうこともあります。特に腹腔内の停留睾丸は見つかりにくいため、ひどくなってから見つかる事も多くあります。


☆なりやすい品種☆

停留睾丸は遺伝する病気です。お腹の中に精巣があっても、それが片側だけだった場合は子供を作ることが出来るので、次の世代にこのような遺伝子異常が伝わってしまうのです。なりやすい犬種にはジャーマンシェパード・ボクサー・ミニチュアシュナウザー・ポメラニアン・チワワに多いとされていますが、小型犬を中心にあらゆる犬種でみられます。
また、ネコちゃんの場合でも、ペルシャやアメリカンショートヘアーなどを筆頭にさまざまな品種でみられることがあります。


☆もしも降りてこなかった場合☆

停留睾丸を持つペットに対しては、このような病気の遺伝子を後世に伝えないためと、のちのち腫瘍化させないために、去勢手術が勧められます。
おおむね生後八ヶ月を過ぎても降りてこない場合には、動物病院に相談をしてみたほうがよいでしょう。人の場合は、性ホルモンの異常が原因として性腺刺激ホルモンを注射する治療法もありますが、ペットの場合はあまり効果がなく、手術が一般的です。
片方だけが腹腔内にある場合には、陰嚢とお腹の2箇所を切開することになるため、ちょっと可哀想に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、腹腔内の精巣はほおっておくとどんどん小さくなって見つけにくくなってしまう上に、歳をとると腫瘍になってしまう可能性が高いため、少し大変でもなるべく早いうちに手術を決断されたほうが、のちのちのペットのためにもなる、ということを家族と動物病院でよく話し合うようにしましょう。


もし男の子のペットを飼い始めるときには、タマタマがあるかどうか、よく触ってみましょう。スキンシップを兼ねて全身のチェックを行ないながら、ちゃんと2個あるかどうか、大きさなどに差がないかどうかを確認し、もし、異常が見られるようであれば、なるべく早く獣医さんに診てもらうようにしましょう。

キーワード

睾丸 精巣 ホルモン オス