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皮膚

犬や猫のストレス性の脱毛症[皮膚]

動物病院で脱毛の原因となるアレルギーや細菌感染、ホルモン障害、寄生虫、カビなどが発見されない場合に精神的な問題からくる心因性脱毛と診断します。 脱毛が起きる前の状況を思い出してみてください。

★心因性とは?★

脱毛は何かしらの病気が原因で、それに引き続いて起こるものがほとんどです。その原因となる病気はアレルギー、膿皮症、ホルモンによる内分泌疾患、外部寄生虫などの皮膚病がほとんどで、挙げればきりがありません。

しかし、脱毛を起こす病気の中には「皮膚自体には原因がない脱毛」もあります。それが「心因性脱毛」です。心因性とは、心理的なものが原因で起こる病気のことです。よく使う言葉で置き換えれば「ストレス」といえばいいかもしれません。実は飼い主さんの思っている以上にワンちゃん・ネコちゃんの心はデリケートなのです。

★なぜ起こるの?★

この病気は何か心理的な変化があったときに、それがストレスや不安のかたまりとなり起こる病気です。その精神的変化から毛細血管が収縮し、血行が悪くなることで毛が抜けてしてしまいます。

また、いつもより強く尾を噛んだり必要以上に足を舐めたりすることで毛が抜けてしまったり、ネコちゃんの場合は過剰な毛づくろいによる脱毛などもみられます。

★ストレスを起こす原因の例★

飼い主さんが忙しくてあまりかまってくれない。
かわいがってくれた人が傍にいなくなってしまった。
その逆に、ワンちゃんやネコちゃんを嫌う人が同居することになった。
気に入っていたものがなくなってしまった。
ご飯やトイレの場所が急に変わった。
あまり散歩に行かなくなった。
ネコちゃんの場合、外に出してもらえないなど自分の行動が制限される。


など、その子が不安や不快に思うことが続いたり、自分の思うとおりにならないような場合が原因として挙げられます。

なお、ワンちゃんやネコちゃんが感じる不安においては時に人間の「強迫症」に似た症状を引き起こすといわれています。不安でいっぱいになって何度も何度も同じところを舐めたりする行動を起こし、それによって毛が抜け続け脱毛を引き起こしてしまうのです。

★どうしたらこの病気だとわかるの?★

動物病院で脱毛の原因となるアレルギーや細菌感染、ホルモン障害、寄生虫、カビなどが発見されない場合に精神的な問題からくる心因性脱毛と診断します。

飼い主さんの記憶の中で、脱毛が起こり始めた少し前に思い当たるような環境の変化がなかったか、ワンやんやネコちゃんがストレスを受けるようなことをしていないかもう一度考えてみましょう。「あ、もしかして…」と思うような心あたりがあったとしたら、必ずしもそれが原因と断定できるわけではありませんが、脱毛を治療するための大きな手がかりとなるかもしれないのです。

またこの病気は精神的なものが原因で起こるため、年齢や犬種、ネコ種に関わらず誰にでも同じように発症します。ただしどちらかといえば精神的に弱い子、例えば臆病だったりおとなしかったり社会性があまり身についていない子のほうが、我慢をしたり不安になったりしてストレスを受けやすいため若干発症することが多いようです。

★症状は…「脱毛」★

心因性脱毛の症状は本来の皮膚病とは異なり皮膚自体には病変がありません。よってストレスなどによる血行不良からくる脱毛であれば毛根から根こそぎ抜けるため、きれいな皮膚が露出した状態になります。

人間の「円形脱毛症」と同じような状態になり、全身が毛で覆われたワンちゃんやネコちゃんにおいては発生場所も特に決まっておらず、痒みもないため脱毛部を気にすることもありません。

また、舐めすぎたり過剰な毛づくろいにより脱毛してしまった場合は、切れ毛によりその部分は短い毛が残った状態になります。舐めることで口の中のバイ菌が皮膚に付き二次的に細菌感染を起こしてしまったり、その部が唾液によりむれてしまい皮膚炎を起こしたりします。

精神的なストレスがそのまま持続すると、脱毛以外に食欲不振や胃腸障害、はたまた自律神経のバランスが崩れホルモンに障害を起こしてしまうこともあるようです。

★どうやって治すの?★

第一の治療は、とにかくその子が不安がっていること、ストレスを起こしている理由、行動問題の原因などを追求しそれを取り除くことです。

なかなか思いつかない場合には、身体を舐めている時間帯やその前後の状況を記録しその行動をしている理由を推測することができれば、その理由に基づき環境や飼い主さんの対応を変えることでその行動をやめさせることも可能といえます。

もちろんそれでもダメな場合は抗不安剤や精神安定剤を飲ませる必要があるかもしれませんが、必ず何かしらの原因があるはずです。日常生活をよく観察したり、脱毛が起こった時期頃に何か環境的に変化があったかどうか、飼い主さんの昔の記憶をたどったりして、できる限りその原因を解明しましょう。

心の病は人間同様、すぐに治るはずがありません。根気よく原因を特定しそれを遠ざけ、時間をかけてゆっくり見守ってあげましょう。

その中で一番大切なのは、ネコちゃんの苦痛を軽減してあげて少しでも長く家族と穏やかな生活を送れるようにしてあげることなのかもしれませんね。

皮膚病の中でも特に心因性脱毛の場合は、そのままにしておいてもいつの間にか治ってしまうケースもよくあります。しかし、それではなぜその子が精神的に病んでいたのかわからないままであるため、またいつか同じような脱毛が再発してしまう可能性もあるのです。

では病気が起こらないためにはどうすればいいのでしょうか?

それにはまず、毎日の生活においてワンちゃんやネコちゃんが常にリラックスできる環境を作ってあげましょう。また、ブラッシングやコーミングは皮膚の血行をよくするのと同時に新陳代謝を促進します。ワンちゃんであれば散歩にたくさん行ったり遊んだりして、気にかけてあげましょう。

飼い主さんとのスキンシップを保つことでワンちゃん・ネコちゃんはリラックスし、気持ちを安定させることができます。そしてそれは皮膚の状態を良好にするだけでなく身体の健康増進にもつながるのです。

心因性脱毛の予防としてもっとも必要なことは飼い主さんの愛情であり、それはワンちゃん・ネコちゃんの心身両面の健康維持にもつながると言えるでしょう。

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