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動物まめ知識

ネコの爪研ぎについて考える 【動物まめ知識】

ネコさんも飼い主さんも!カリカリしないでちょっと一休み!ネコさんが爪とぎする理由について考えてみよう。


★猫の爪はどうなってるの?★
 
人間の爪(指)の数は手が10本、足も10本ですが、猫の爪(指)の数は前足が10本に対して後足が8本です。爪は内側と外側の二層構造になっており、爪の内側には神経と血管が走行しています。猫の爪をよく見てみると中心にうっすらと赤く血管が見えます。ですから「深爪」をすると痛がり、当然ながら出血します。

爪からの出血はなかなか止まりにくいので、出血した爪を含め腕をガムテープでぐるぐる巻きにして動物病院を受診される飼い主さんも少なくありませんが、粘着性物質による皮膚のかぶれや脱毛の原因となります。深爪の民間療法としては綿棒の先に片栗粉をつけて出血した爪にピンポイントで塗りつけるか線香で出血部位を焼くなどの応急処置が効果的かもしれません。

外側の爪はスリッパをいくつも重ねたような構造になっており、一番上側の古くなった「スリッパ」が剥がれるシステムを採用しています。古い「スリッパ」を抜き取る作業を通称「爪とぎ」と呼びます。人間の爪と同様、猫の爪もほっておけば伸びていきます。


★猫のハンティングと爪の関係★
 
「能ある鷹は爪を隠す」ということわざの語源と同じで、猫も通常は爪を引っ込めて隠しています。
 
野生の狼は「追跡型」動物で捕獲した獲物を振り回したり首筋を狙い噛み付き秒殺します。一方、猫は「待ち伏せ型」動物であるため、獲物に気付かれないように微妙な足音も消すために爪を引っ込めておくことができるしくみになっています。突発的に襲い掛かりジャンケンでいう「パー」のように指をおもいっきり開いて爪を剥き出しにして獲物を押さえ込む戦略をとります。つまり出し入れ自由な爪を効果的にハンティングに使用できるのです。余談になりますが猫が交通事故に遭うとほとんどすべての爪がダメージを受けています。

猫の鋭い爪はハンティングの際に最強の武器となりますが、ハンティングする機会の少ない現代の家猫にとっては一生懸命爪を研ぐ必要性は少なく、爪とぎには単に爪を尖らせておくこと以外に目的があるのです。


★爪とぎの意外な目的とは?★
 
サウナで汗が滴り落ちる腕を見れば想像しやすいと思いますが、人が汗を出すのは全身にエクリン腺が多く分布するからです。一方、猫はエクリン腺が足の裏(肉球)にしか存在しないので肉球からしか汗をかきません。

動物病院で猫が緊張すると診察台に肉球の跡がくっきり残る理由も理解できます。(まるでドイツ生まれのアウトドアブランドであるジャックウルフスキンのマークのよう)人ではエクリン汗腺以外に「ワキガ」や「オヤジ臭」などの体臭の要因となるアポクリン腺が存在しています。猫にはこのアポクリン腺が全身に分布しますが、セルフグルーミングの効果も含め体臭はほとんど気になりません。   

フランスの獣医行動学者の研究(the World Small Animal Veterinary Congress in 1996)で猫が分泌するフェロモンがはじめて確認されましたが、猫の顔や尻尾にはそれぞれに特有のフェロモンを分泌する臭腺(アポクリン腺、エクリン腺、皮脂腺)があり、室内の柱や家族にその部分を「スリスリ」させて、自分の匂いをこすりつけて「マーキング」します。実は肉球にも分泌腺があり爪とぎの際にパットから出る分泌物をこすり付け、自分の臭いをつけることにより安心しているのではないかと考えられています。


★後足の爪とぎはどうするの?★
 
基本的に爪とぎは前肢だけですが、何もしなければ伸びてしまう後肢の爪は猫が自分で噛んで古くなった爪を剥がします。小学校の時、クラスに爪を噛む習癖のある子を目にした方も多いと思いますが、これは医学的に「咬爪症(こうそうしょう)」といい心理学的な影響が強いといわれています。爪を噛むことにより気持ちを落ち着けたり集中しやすくする作用があります。乳児の指しゃぶりにも同じような効果が認められています。

猫が後肢の爪を噛む行動も爪をつむ目的以外に気持ちを落ち着かせる効果やストレス解消の意味合いも含まれているかもしれません。完璧には引っ込まない後肢の爪は、前足の爪ほど鋭くありませんが、「猫キック」の際には効果を発揮します。闘争に負けると判断した猫が逃亡する際の「木登り作戦」にも鋭い爪は欠かせない存在となっています。


このように、爪とぎは猫にとってさまざまな目的があり不可欠な行為です。爪とぎマットやキャットタワーなど限られた場所で爪とぎをしてほしいという人間の勝手な願望と爪とぎをする猫の本能的な習性の一騎打ちとなる訳です。
 
部屋のソファーやふすまが「爪とぎ災害」にあわないように定期的に爪をつむか爪カバーを装着するなどの対策が必要になります。

キーワード

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