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動物まめ知識

一生に一度の大切な時期「臨界期」って何?【動物まめ知識】

決まった時期に光に触れさせないとちゃんと見えるようにならない、など。組織が作られていくのには大切な時期が存在するのをご存知ですか?


★臨界期とは?★  

動物はそれぞれ親から受け継いだ遺伝子を持っています。しかし、その遺伝情報は刺激がなければ正常に機能することはできません。例えば、先ほどの猫の場合、視覚に対する正常な遺伝子はあったものの、視覚に対する刺激が、ある「大切な時期」になかったため、視覚機能が失われたのです。

その「大切な時期」というのが「臨界期(感受性期)」と呼ばれる時期です。

臨界期は、脳の中で覚えたり感じたりする神経回路(ニューロン)が、外からの刺激により集中的に作られたり、回路の組み替えが盛んに行われる時期です。また、学習を成立させる最も感性豊かな限られた時期でもあります。「視覚の臨界期」「聴覚の臨界期」など、それぞれの動物種のそれぞれの機能には、一生に一度しかない絶対期間の「臨界期」が存在するのです。


★一生に一度だけの臨界期 ★  
 
脳ではインプットが少ない神経回路は脱落してしまい、インプットされる情報が多いほど回路が強化されるというシステムとなっています。

臨界期は、一生のうちで一度だけです。「臨界期」までに一度も使われなかった脳細胞は一生必要ないと判断され、臨界期を越えた時点から消滅していく運命となるのです。盲目になった猫は「視覚」の「臨界期」に適切な刺激を受けなかったため、脳(大脳皮質視覚野)の神経回路はその眼に対する反応性を失ってしまい、結果として盲目となったと言えます。このことを裏付けるように、遊び道具のない環境で育ったネズミに比べ遊び道具をたくさん与えたネズミの方が脳の神経回路は大変発達し、脳の重量も重くなったという報告もあります。

人間の場合も同様です。「ことば」についての臨界期は、生後約6ヶ月位から神経回路の組み換えが始まり、12歳前後で終わるといわれています。また、五感の中では、聴覚が一番早く臨界期を迎え、胎児の頃からスイッチがオンになると言われています。他の音と比べることなく音の高さを特定できる「絶対音感」に関する「臨界期」は3〜5歳から9歳前後までであり、残念ながら幼少期にしか身に付けることがでないとも言われています。


★犬の臨界期とは?★    
 
犬の場合、新生児期は外部からの刺激によって視覚・聴覚・嗅覚が完全な状態となる大事な時期であり、身近な自分の環境を習得する時期でもあります。鼻と眼で兄弟の存在、親の存在を確認するこの時期は、学習にとっても大事な時期であり、この期間中に学習しないと親や仲間の臭い、人間の臭いをかぎ分けることができなくなります。

犬の臨界期〜第1臨界期 (0〜3週齢)〜
 
子犬は誕生してからはじめの21日間は、常に母親(または代理母)と共に過ごします。特に生後5〜6日間は、例え母犬が食事をするときでもめったに母犬と子犬は離れることはありません。これは子犬が母親に依存しているということだけではなく、母犬あるいは兄弟に寄り添うことによって体温が低下しないように保温する意味もあります。生まれたばかりの子犬の体温は、はじめの1週間は約29.4 〜32.2 ℃です。 子犬にとって最初の21日間は非常に重要で、保温、食事、母犬が舐めることによるマッサージ、および睡眠に専念します。

犬の臨界期〜第2臨界期(4〜7週齢)〜
 
生後21日目頃から子犬は、目がよく見えるようになり、聞いたり臭いを嗅ぐことが出来るようになります。視覚や聴覚、臭覚に関する臨界期はこの時期から始まります。そして、「学習」ができるようになるのもこの時期(生後21日目以降)です。

また、この時期からこれから先の発達に大きな役割を果たす、いわゆる「社会化期」が始まります。この4週間で脳や神経系が発達し、7週目までに成犬とほぼ同じレベルのキャパシティーをもつようになると言われています。この時期(4〜7週間)に他の犬と遊ぶことは幅広い成長を遂げるために、非常に重要となります。

一方、7週以前に母犬や兄弟と離すと、完全に社会化できず、他の犬への関心が少なくなり、出会うすべての犬へ戦いを挑んだり、他の犬に怯えたり交配させるのが難しくなります。これらのことからも子犬が新しい飼い主さんの家に行く理想的な時期は、乳離れさせる良い時期でもある約8〜10週齢であると言われています。

犬の臨界期〜第3臨界期(7〜12週齢)〜
 
第3臨界期である49〜84日(7〜12週)は、「人と犬の関係を形成する」上で非常に重要となる期間です。この期間は心理的にも感情的にも非常に敏感で感受性が豊かな時期ですので、様々な経験や教育を受けさせるべき時期で、効率的に多くの事象を吸収することができます。この年齢では1回に長時間のトレーニングをするよりも、15分のセッションを毎日続ける方が効果的です。仔犬が最も社交的になる5〜12週齢が、訓練し始める最適の時期だと言われています。

犬の臨界期〜第4臨界期 (12〜16週齢)〜
 
このステージになると仔犬は母犬から独立し始め、犬は誰がボスであるかを決めます。本格的なトレーニングを始めることができる時期でもあります。16週齢までに社会化が不十分であった犬は他の犬と仲良くなるチャンスが極端に少なくなります。

犬の社会化期に関する「臨界期」は生後21日〜112日(生後3〜16週)の13週間と言われており、一生に1度しかなく、この時期に2度と戻ることはできません。この短い期間の影響が仔犬の発育において極端に重要となることを理解しておくことが非常に重要となるのです。

★「インプリンティング(刷り込み)」との関係は?★  
 
例えば鳥が「さえずり」を得るためには、3〜6週間ほど親鳥や成鳥にずっとついて学習しなければなりません。もし仮に一定期間幼鳥の耳をふさぎ、模倣するための鳴き声が耳に入らないようにすると、その鳥は「さえずり」が出来ず、成長しても仲間集団には入れず求愛も出来ないことになります。

またカモ類のヒナが生まれた直後に眼にした、動く対象物を親と認識するということは皆さんも聞いたことがあるでしょう。模倣という自己学習によって動く対象物の後を追って歩くことを、動物行動学では「インプリンティング(刷り込み)」と呼びます。つまり動物が生まれ、生育する過程で特定の刺激に反応し、まるで印刷されたかのように環境によって行動を身に付けてしまうことです。
 
お父さんライオンのハンティング方法を見て育った子ライオンたちに獲物を捕食する能力が伝わることも「インプリンティング」となります。この「インプリンティング」が行われる時期がまさに「臨界期」なのです。


乳幼児のうちに様々な刺激を脳にインプットさせた方がよさそうだ、という俗説が近年の脳科学的研究においても明確になりつつあります。臨界期に関しては未だ解明されていない部分が多いことは否めませんが、犬や猫においても臨界期に対する理解を深めることはこれからますます必要となってくるでしょう。

適切な時期に脳に適切な刺激を与え、記憶させておけば、個々の仔犬の感性を高め、より高いポテンシャルを引き出すことができ、飼い主さんとの生活により順応しやすくなる可能性があります。犬においても「しつけ」という観点において「早期教育」が重要であることは周知の通りですが、愛犬や愛猫が将来心豊かに育つための畑作りとしても「臨界期」は大切な時期であると考えられます。

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