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はぐれ獣医の皮膚病研究所

猫・犬アレルギー患者のための戦略方法とは?

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≪ 小児喘息 #1 ≫


<ペットの数は子供の数を越えた?>

小児喘息はこの20年で確実に増加傾向にあると言われています。ガイドラインには小児喘息の危険因子として「猫や犬のアレルゲン」と記載されており、猫や犬との生活によって小児喘息の症状を悪化させる可能性が指摘されています。

現在では、子供の数よりペットの数の方が多いといわれています。ペットフード工業会の調査によると日本国内の犬猫飼育頭数は約2,168万頭であり、総務省が2007年4月1日に発表した子供(15歳未満)の数は約1,738万人という推計データが出ています。
つまり、これまで以上に小児喘息におけるペットとの関わり方が問題視されてくる可能性があるかもしれないということです。

そこで、ペットのアレルギーについて理解を深めることによって、喘息でもペットと生活したいと望む方への道しるべとなれば幸いです。


<本当に猫や犬の「毛」が問題なのか?>

小児喘息の最も重要な原因因子として、室内アレルゲン(室内塵ダニ、ペット、カビ類)や屋外アレルゲン(花粉、カビ類、昆虫類)などの吸入アレルゲンがあげられます。一般的に動物の毛が問題となると認識されていますが、実はアレルギー反応の主要な原因は毛だけではなく、動物の垢(あか)や古い細胞(角化細胞)のフケです。

また、猫の主要アレルゲンは「Fel d 1:( Felis domesticus allergen 1)」というアレルギー反応誘発物質で、すべての猫で見出されます。この「Fel d1」は、皮膚の皮脂腺や唾液、涙腺、尿、肛門嚢の分泌中でも産生されます。

猫アレルギーのヒトが全身毛刈りをした猫やスフィンクスと接触しても同様の症状がでることも理解できます。唾液腺で「製造」された「Fel d1」は猫がグルーミングすると毛の表面にコーティングされ、さらに猫が物に対して皮膚を擦り付けるため環境に広がります。

猫アレルギー患者は、猫を抱っこしなくても、猫がいる部屋に入るだけで症状が出ます。これは、乾燥して剥がれ落ちたフケが空気中に舞っているためで、床に付着したり、家具やベットに広がります。
逆に説明すると、ペットに対するアレルギー反応を引き起こす為には、たくさんの動物のフケは必要なく、少量で長期間空気中に浮遊している量で十分であるということです。動物が数週間でさえ家にいれば、アレルゲンは長期的に検出され、アレルギー反応を引き起こすのに十分なフケが空気中に浮遊しているのです。
特に、猫主要アレルゲン( Fel d 1)は猫の居ない家庭でも空気中に検出されることがわかっており、例え自宅に猫がいなくても猫アレルギーを引き起こす可能性があると言われています。

フケはとても小さく軽いので、外出先や職場で衣服に付着した猫抗原(略してネコウゲン)が持ち込まれることも考えられるからです。動物のフケは、例えば小学校の教室や職場など多くの公共の場所にアレルギー反応を引き起こすだけの量が存在します。もしペットが住んでいた家に入居したとしても、猫が原因となって起こっている症状を減らすには、数ヶ月は必要です。

一方、犬の主要抗原は「Can f1」と呼ばれています。犬を飼っている全ての家で、また飼っていない家でも検出されます。犬でも唾液や尿がアレルゲンとして影響します。その他、ダニ(Der p 1、Der f 1)やゴキブリ( Bla g 1 and Bla g 2)に加えて、マウス抗原(Mus m 1)、ラット抗原 (Rat n 1)、カビ抗原(Asp f 1 and Alt a 1) もアレルギーの増悪因子となっている可能性があります。


<喘息の息子がどうしてもペットを飼いたいという場合はどうすればよいか?>

例え自身や子供がアレルギーであっても、それ以上にペットとの生活を望む方もいらっしゃいます。
アレルギー検査をして、動物のフケに対するアレルギー反応の有無を検査し、陽性だった患者がペットを飼っている場合、医師に「ペットが家にいる限り、アレルギー反応を抑えることは難しい」とキッパリ言われても、可愛いペットを手放すことには躊躇する気持ちも理解できます。

日本アレルギー学会では、「アトピー体質を持つ小児のペット飼育は推奨できない」と報告していますが、欧米では、逆に、「幼児期のペットとの生活が、将来アレルギーになるリスクを下げる」と報告され、それを裏付ける疫学調査結果も多数報告されています(参考文献参照)。

アレルギーや喘息の子供達が非常に多く、その理由の一つに「清潔過ぎる生活」が指摘されています。猫や犬の口の中にはバイキン(グラム陰性菌)が一般的に存在することが分かっており、子供たちが、動物たちに舐められたりすることにより、そのバイキンの毒素(エンドトキシン)に暴露され、アレルギーが起こりにくい体質に免疫システムがシフトされると考えられているため、動物と生活する子供たちがアレルギーのリスクが少なくなるという説もあります。

つまり、猫アレルギー患者に対して、単に猫を避けることだけが対策ではないということです。そこで、ペットとの生活を継続させながら、症状を緩和するための最良の方法を模索する必要があります。


≪ 猫・ 犬アレルギー患者のための10の戦略 #2 ≫


@週に1回、犬をシャンプーする/猫の体を拭く:抗原となるフケを一時的には減少できますが、効果は一時的かもしれません。濡れた暖かいタオルで体をやさしく拭いてあげるだけで、毛に付いた埃、体のフケを減らす事が出来ます。

Aこまめなブラッシング

BHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルター使用の空気清浄機の設置(特に寝室):ファンは”auto”ではなく”on” にして下さい。

Cベットカバー(ダスキンなど)の着用:空中の猫・犬抗原やダニ抗原を減少させられる。

D掃除の徹底
 ・カーペットを除去
 ・出来るだけ家具を減らす。
 ・週一回はカーテンを洗う。
 ・壁の拭き掃除(効果的)
 ・ガムテープ作戦やコロコロ攻撃

特に猫のフケはダニの糞などと比べて非常に細かく軽いため長時間空気中に漂います。また、小さくて粘着性があるので、床、カーペット、壁、家具、蛍光灯カバー、天井などに付着します。またこれらを取り除くためにHEPAフィルター使用のバキュームクリーナーを使って吸引すべきです。床であれば毎週拭き掃除をすべきでしょう。

E寝室をペットの立ち入り禁止区域とする。ペットと一緒に眠ることは、一晩中アレルゲンに暴露されていることになります。犬は庭で生活させる。

F短毛の雌猫を選択する:精巣で製造される「テストステロン」というホルモンが皮脂腺での「Fel d 1」産生を増加させるので、雄猫のほうが産生量多く、去勢すると「Fel d 1」の産生が減少すると言われています。

G皮膚病になりやすい犬種を避ける:他の犬種に比べてより多くのアレルギー性蛋白(Can f1)を産生する犬種がいます。ウエストハイランドホワイトテリアなど皮膚疾患に罹患しやすい傾向にあるいくつかの犬種はよりアレルギー性蛋白を産生します。

Hぺタルクレンズ :英国のMarket Research Solutions Ltd およびReading Scientific Servicesで安全性が評価されれいます。

I飼い主さんの体質を改善する:減感作療法は猫では効果的ですが、犬では効果が十分ではないようです。
猫に対してアレルギーがあっても、犬は大丈夫という方もいますが、猫に対するアレルギーは犬に対するアレルギーの2倍と言われています。
ペットと生活することによって喘息などのアレルギー症状が悪化する可能性も十分考えられますので、医師と十分相談して吟味する必要があります。まず、何に対して反応するかという検査(抗原特異的IgE検査)を実施してから家族会議を開催することが賢明かもしれません。


【参考文献】

「ペットが2頭以上いる環境で乳児期を過ごした子供は、喘息やアトピー性皮膚炎が発症する確率が低い傾向があった。犬や猫を1頭だけ飼っている家庭で育った子供では、ペットがいない家庭とアトピー性疾患の発症率は変わらなかった。
さらに、ペットが2頭以上いる家庭で育った子供は、犬や猫だけでなく、花粉やカビなど他の抗原に対しても他の子供より反応しにくかった。」
Ownby DR , Johnson CC , Peterson EL . Exposure to dogs and cats in the first year of life and risk of allergic sensitization at 6 to 7 years of age. JAMA. 2002 Aug 28;288(8):963-72.


「猫と生活しているヒトはアレルギー性鼻炎とスギ花粉症の発生率が低かった。」
Kurosaka F, Nakatani Y , Terada T , et.al. Current cat ownership may be associated with the lower prevalence of atopic dermatitis, allergic rhinitis, and Japanese cedar pollinosis in schoolchildren in Himeji, Japan. Pediatr Allergy Immunol. 2006 Feb;17(1):22-8.

「1歳未満で猫または犬を飼い始めた子供は7-9歳で鼻炎に、12-13歳で喘息に罹患する率が少ない」
Hasselemar B, Aberg N, Eriksson B, Bjorksten B Does early exposue to cat or dog protest against later allergy development? Clin Exp Allergy 1999;29:611-7
Perzanowski MS , Ronmark E , Platts-Mills TA , Lundback B Effect of cat and dog ownership on sensitization and development of asthma among preteenage children. Am J Respir Crit Care Med. 2002 Sep 1;166(5):696-702.

「母親に喘息の既往歴がない子供が、生後2〜3ヶ月で猫と生活すると1〜5才までの間に喘息となるリスクが少なくなるが、母親に喘息の既往歴がある子供が猫に暴露されると3歳以降に喘息となる可能性が高くなる。犬との生活(犬のアレルゲン)あるいは父親の喘息既往歴は子供の喘息や猫への暴露に影響を与えない。」
Celedon JC , Litonjua AA , Ryan L , Exposure to cat allergen, maternal history of asthma, and wheezing in first 5 years of life. Lancet. 2002 Sep 7;360(9335):7


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