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2月のColumn ☆イヌの膝蓋骨脱臼ってなぁに?☆

「うちの子、なんだか最近、散歩中に突然足が吊ったみたいになってしばらくするとケロっと治ってるんです…」それは、ひょっとすると“膝蓋骨脱臼”(ひつがいこつだっきゅう)かもしれません!!


▼△膝蓋骨脱臼ってどんな病気?▼△

簡単に言ってしまえば「膝蓋骨」が「 脱臼」してしまう病気です。「膝蓋骨」とはいわゆる“膝のお皿”のことで、膝を伸ばしたり曲げたりするときに働く靭帯を、ずらさずにスムーズに動くようにしている骨です。

膝蓋骨は靭帯でつなぎとめられているため、この骨がなんらかの原因で脱臼してしまうとそれに付いている靭帯も共にうまく動かせなくなり、結局は足を着くことができなくなってしまうのです。

また膝蓋骨脱臼には、内側に脱臼する内方脱臼と外側に脱臼する外方脱臼があり、小型犬には内方脱臼が、大型犬には外方脱臼が多いと言われていましたが、最近は大型犬の膝蓋骨内方脱臼もよく見られます。なお大型犬あるいは超大型犬における膝蓋骨外方脱臼は重度な足の変形を伴う独特な症候群であることが多いため、予後は要注意です


▼△どうして起こるの?▼△

膝蓋骨脱臼は遺伝的な骨格の異常が原因につながることがほとんどです。例えば…

・ 骨格が正常どおりではなく、歩き方が内股気味もしくは外股気味である
・ 膝蓋骨をスムーズに動かすレールの溝が浅く、常に脱臼しやすい状態にある
・ 膝蓋骨に付いている靭帯の位置がおかしい


そして何回も脱臼を繰り返しているとそのレールの溝がどんどん磨り減ってしまうため、さらに脱臼しやすくなってしまいます。

膝蓋骨脱臼はすべての犬種で起こりますが遺伝的な骨格の構造から、ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、マルチーズなど、「トイ種」と呼ばれる小型犬種に多い病気のようです。


▼△これって痛い? 痛くない?▼△
 
交通事故などで物理的に障害が起こった場合は痛みを伴いますが、基本的な骨の異常構造による膝蓋骨脱臼では痛みがほとんどありません。よって動きたがらない、元気がないなど、特にほかの症状も大して見られません。

しかし、脱臼をしてしまうとその部分の関節を動かすことができなくなります。そのため足がつったようにケンケンしたりスキップするように走ったりするので、飼い主さんから見ても明らかに異常な症状がわかります。

ただし、膝蓋骨脱臼は軽度であれば、もし脱臼してしまっても自分で元に戻してしまうことがあります。そしてまるで何もなかったかのように再び歩き出すことも多いため、飼い主さんも治ったと思い込みそのまま様子を見てしまうこともよくあります。

また、飼い主さんの留守中に脱臼が起こり、帰宅した時には元に戻っているなど、その症状の発生に気づかないことも多々あるようです。

なお脱臼をしやすい子は膝の曲げ伸ばしをしたときに膝蓋骨がガクガクと動くので、飼い主さんがシャンプーで足を洗っている時などに気づくこともあります。


▼△重症度がランク分けされます▼△

膝蓋骨脱臼はその程度によってグレード1〜4の4つにランク分けされます。

《グレード1》
膝の関節はほとんど正常ですが、関節を伸ばして指で押すことにより簡単に脱臼が起こります。また押している指をゆるめると自然に元に戻ります。

《グレード2》
膝の関節を曲げた時に脱臼が起こり、日常の生活で時々はずれるような状態です。はずれてしまった時は指で元に戻すか関節を伸ばさないと元の位置に戻りません。

《グレード3》
普段でも膝蓋骨が脱臼したままの状態が多く、足を伸ばすと元に戻ることがありますが、だいぶ病気が進行しています。そのため完全に足を挙げてしまいます。


《グレード4》
膝蓋骨が脱臼したままで元に戻そうとしても戻らず、はずれっぱなしの状態です。骨の変形もかなりあり、手術以外に整復する方法はありません。

▼△触診が第一! 動物病院で診てもらいましょう?▼△
 
膝蓋骨脱臼はまず触診での診断が一番重要になります。獣医さんに膝蓋骨のズレの程度を診てもらい、そのグレードがどのくらいなのかを判断してもらいましょう。

また、レントゲンにより脱臼を証明することも出来ますが、足を伸ばして撮影する時に膝蓋骨が正常な位置に戻ってしまうこともあります。しかし、レントゲンではそのほかにも骨の異常構造やレールを構成している溝の深さなどを診断することが出来ます。


▼△どんな治療方法があるの?▼△
 
治療は軽度であれば消炎剤などの処方や安静にし経過観察することが多いです。中にはレーザーをあてるなどの理学療法をおこなう場合もあります。どちらにせよ、1〜2ヶ月に一度くらいの間隔で定期的に触診のチェックを受け、病気の進行を知ることが大切です。

また、グレードが3以上の場合や骨格の異常が重度で常に脱臼を繰り返す状態であれば、しっかり膝蓋骨を固定する外科手術を行うことがほとんどです。

どちらにしても、治療しないでそのままにしておくと関節が変形してさらに運動機能にも障害が出ることがあるので、脱臼の程度を知るためにも必ず動物病院で診てもらいそのグレードに合った治療をしましょう。足を付けずに不自由な思いをしているのはその子なのです。


▼△これが大事! おうちで出来る予防策▼△

膝蓋骨脱臼と診断された場合はそれ以上進行しないようにすることがとても大事になります。まだそのような症状になっていない場合でもいつか起こってしまう可能性があるため、予防策として家で出来ることを知っておきましょう。

もしその子が肥満である場合は、それが膝蓋骨脱臼の一番の原因になっているといっても過言ではありません。がんばって減量させて、足にかかる負担を出来る限りなくしてあげましょう。

また、生活環境に気を配ってあげることも重要です。床がフローリングの場合はじゅうたんやお風呂マットを敷くなどして滑りにくいものにします。足の裏の毛が伸びたら滑らないように短く刈ります。さらにソファーへの上り下りや飼い主さんに対してのジャンプなどもできる限りさせないようにし、過度のボール投げやアジリティーなど急に向きを変えるような運動を避けましょう。

大事なことはとにかく「足に負担がかからない」ようにすることです。そのような生活が出来るよう飼い主さんもいろいろと工夫してみましょう。


▼△「うちの子は大丈夫」は、NG!!▼△

まだ軽症だからといってそのままにしておくと、脱臼した側の足をかばって歩くため今度は逆側の足に負担がかかってきます。するとその逆側の足まで脱臼しやすい状態になってしまい、後々歩けなくなってしまう可能性も出てきます。すぐもとに戻るからと脱臼を軽くみていると、正常な足まで病気にさせてしまうこともあるのです。

また、膝蓋骨脱臼の有無に限らずほとんどの犬は老化とともに筋肉の衰えや骨の変形が起こり、靭帯も弱くなっていくものです。前述の予防策を参考にして、足に負担がかからないような生活環境を作ってあげましょう。

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