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消化器

ペットの口が臭いんです 〜口臭の原因と対策〜 [消化器]

ペットの口臭がたまに気になったりしませんか?そんなペットの口臭、特別気にしなくてよいものでしょうか?でも実は口の臭いには理由があったんです!


★口臭の原因★

国際口臭学会によると人の口臭のおよそ85〜90%は口腔から発生するといわれています。犬や猫においても口臭の最も一般的な原因は歯垢・歯肉炎などによる口腔内の疾患です。それでは口腔内の疾患がどのように起こるのかを見てみましょう。
 
歯の表面に付着した細菌は、数日以内に歯石の元となる石灰化を引き起こります。プラーク(細菌の塊)や歯肉炎が進行すると歯周炎に進行して、歯周ポケット(歯と歯茎が剥がれてしまった状態)が形成されます。プラークや歯周ポケットまたは舌(背側)に存在する細菌が食べかすや歯垢やタンパク質を分解することによって口臭の主な原因となる物質(揮発性イオウ化合物)を産生します。これが口臭の正体なのです。

揮発性イオウ化合物は口腔内の悪臭に影響を与えるだけではなく歯周病の原因ともなります。歯周病とは、歯を支えている歯肉(歯茎)や歯を支えている骨(歯槽骨)、歯の周りの靱帯(歯槽骨と歯の間を結んでいるもの)、セメント質(歯の根の部分をおおっているもの)などの歯周組織が細菌によって破壊される病気です。このようにペットのお口の中の何らかの異常が口臭に結びついていることが多く考えられます。


★猫に多い歯肉炎・歯周病★
 
歯肉炎の発生率は犬に比べて猫で多いといわれています。特に屋外で生活している猫に多く、1歳未満の若い猫が歯肉疾患にかかっていることは少なくありません。猫の場合、歯肉疾患の多くはウイルスが原因となります。ウイルスによってダメージを受けた歯肉に形成された歯周ポケットに細菌が蔓延ることが原因です。

また、3〜4歳の成猫のおよそ85%の猫は歯周病になっていると言われています。10歳以上となると代謝性疾患と腎疾患に焦点がシフトします。口腔内のプラークにおける細菌は腎臓を通じて除菌されますが、この時に細菌が腎臓からの排出に障害をもたらすと考えられています。この事実が老齢猫に腎不全が高確率で発生することに影響を与えているかもしれません。


★ペットの口腔治療とは?★
 
歯周病のステージによって治療が変わります。 初期のステージ(早期の歯肉炎)であればスケーリング処置(歯に付着したプラークや歯石、その他の沈着物を器械で除去する処置)が効果的かもしれません。しかし、歯槽骨(歯を支えている骨)に炎症が波及し、重度の歯周病に進行してしまうと、歯を抜く処置が必要となることもあります。
 
また、抗生物質は、歯周病と口臭を引き起こす細菌を破壊するのに効果的かもしれません。錠剤が飲ませられない場合は、殺菌効果のあるスプレータイプの消毒剤を処方されることもあります。いずれにしても動物病院で、お口の状態をしっかり診てもらうことが大切です。


★対策は?★
 
「プラーク・コントロール(plaque control)」という言葉は、歯ブラシや歯磨き粉のCMの影響もあり、一般的になってきました。ペットのお口の病気を予防する上でも大切なのはこの「プラーク・コントロール」です。 プラーク・コントロールとは、正しい歯磨き、正しい食生活により、歯茎の健康を取り戻すことです。確かに犬や猫に歯磨きを習慣にさせることは簡単ではありません。しかし歯ブラシでのケアが困難なら、指サックや軍手を使って歯あるいは歯茎の表面をこするだけでも違いが出てくるものです。
 
歯ブラシの習慣は、仔犬・仔猫の時期につけるとよいでしょう。人間で言う「幼稚園」程の年齢であればルーチンワークとして躾けることが可能です。ところが残念なことに、歯磨きがいくらうまくできたとしても、歯石や歯垢を「つきにくくする」だけで、完全に取り除くことはできません。

日頃のプラーク・コントロールに加え処方食や歯科用チュウなど口腔衛生のトータルケアが必要となります。最近では、処方食あるいは歯科用チュウを与えた方が歯の表面に付着するプラークや歯石を減らすのに効果的であることが分っています。デンタルケア用の処方食には、粒が特殊な構造をしており、犬や猫が噛んだ時に歯の表面を機械的に擦る効果が期待できるものもあります。日々の食事の中で、歯垢や歯の着色を緩和し歯肉炎を減らすケアができるということです。その子にあったデンタルケアを正しく選択するため、獣医師に積極的に相談してみるとよいでしょう。


★原因はお口の異常だけ?★
 
先ほどお話した通り、ペットの口臭の原因のほとんどは口腔内の異常によるものです。しかし、口臭はお口だけではなく、体の他の部分の異常を示していることもあるのです。発生頻度は別として他に考えられる原因としては以下のものがあります。

・代謝疾患病(糖尿病、尿毒症)
・呼吸器疾患(鼻炎、副鼻腔炎, 肺癌など)
・重度の腎疾患、胃腸疾患(巨大食道、腫瘍、異物)
・口周囲の皮膚疾患(口唇皺壁膿皮症)
・食事(臭いの強い食品成分 食糞)
・非-歯周病性口腔疾患(歯科矯正, 咽頭炎, 扁桃腺炎, 腫瘍)
・異物、外傷、開放骨折、感染症(細菌、真菌、ウイルス)
・自己免疫疾患、好酸球性肉芽種症候群 
   など

ペットの健康状態を把握する上で口臭のチェックは非常に大切だといえるでしょう。


★まとめ★
 
犬や猫において口臭は一般的な問題です。問題となる口腔内疾患が進行し口臭が気になりだすまで飼い主さんに気付かれないことが多いのです。特に歯周病は、「サイレント・アーミー(沈黙の病気)」とも呼ばれ、痛みなどの自覚症状が出にくく、放置しておくと全身疾患を引き起こす引き金にもなりかねない病気です。口臭の原因は多岐にわたり局所原因が複雑に絡み合って発生します。口腔内のケアはADL(日常生活動作:Activities of Daily Living)を高め、QOL(生活の質:Quality of Life)を向上させます。これを機に一度あなたの大切なペットの口をチェックしてみてはいかがでしょうか?

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