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呼吸循環器

気管虚脱ってどうしてなるの?  [呼吸循環器]

咳の原因はいろいろあります。その中で気管虚脱は犬の咳の原因として多く見られるものです。人間ではあまり聞きなれない”気管虚脱”について勉強しましょう。


★どんな病気?★ 
 
気管は通常、その周囲を軟骨や筋肉が取り巻いていて、呼吸をしやすいように筒状の形をしています。しかし、気管虚脱になるとその気管が押しつぶされたような形に変形してしまったり、正常な硬さや弾力がなくなってしまいます。すると、息を吸うときに気管がつぶれて空気の通り道が妨げられ、咳や呼吸困難を起こしてしまうのです。

気管虚脱は気管の構造が変性しやすい中高年期の犬や、トイ種(トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、チワワ、マルチーズなど)に多く発生します。その中でも特に肥満気味の犬に多くみられます。また、呼吸器や心臓に負担がかかる夏場や暑い季節に発症しやすいといわれています。

一度、変形を起こした気管は元に戻らないため、多くはそれ以上悪化しないように薬を飲ませることで状態を改善させます。


★なぜ気管の変形が起こるの?★ 
 
気管の変性は様々な原因によって起こります。

<遺伝的・栄養的素因>
 
遺伝的に、生まれた時から気管の先天性の異常があったり、小さい頃から肉100%のフードのみを食べさせていたことなどで栄養が偏り、気管軟骨の構造学的変性を起こす場合です。


<肥満犬や短頭種の犬>
 
肥満になると気管虚脱の発症率が高くなります。気管の周りをとりまく脂肪が気管を圧迫し、変形を促すのです。また、短頭種の犬はもともと鼻道が狭く、さらに首や胸がぎゅっとつまった体型なので強く呼吸をしなくてはならず、肥満の犬同様、常に胸部に負担がかかりやすい状態にあります。このような無理が積み重なると、徐々に気管を守る軟骨がつぶれてきて気管虚脱を起こしてしまうのです。


<呼吸器疾患・心臓疾患の影響>

心臓疾患や慢性気管支炎などの病気による咳や過呼吸が原因で、気管軟骨や気管周囲の筋肉、周りの組織などが侵され、その結果として気管が虚弱となり変形し気管虚脱を起こしてしまう場合もあります。


★ガチョウの鳴くような咳が特徴★
 
気管虚脱の主な症状は、特徴ある「ガチョウの声」のような空咳です。この咳はストレスや運動で悪化します。また食事のときに咳が出ることもあります。苦しくなってくるとよだれを垂らしたり舌を巻くようにして呼吸をし、さらに呼吸困難な状態が続くと舌が紫色になりチアノーゼ(酸素欠乏状態)となってしまいます。

苦しければ苦しくなるほど懸命に呼吸をして酸素を取り込もうとするため、気道内の通常の気管部分と気管虚脱部分の酸素圧差が広がり、よけいに苦しい状態となってしまいます。

この状態が長く続き治療が遅れると、失神して倒れたり救命できても脳や肺に回復不能な障害を残してしまう場合があります。


★この病気の診断方法は?★ 
 
診断がもっとも確実な方法はレントゲンを撮ることです。正常の気管部の太さに比べて気管虚脱を起こしている気管部はとても細い状態にあります。また、そのレントゲン検査により気管虚脱と共に心臓や肺で併発している病気の確認や違う病気との鑑別をすることができます。

そのほか、触診により気管虚脱部位を確認したり、心音の聴診により他の慢性心疾患との鑑別をしたりします。


★どうしたら咳が止められるのだろう?★ 
 
軽度の症状の犬は適切な栄養を与え、生活から激しい運動やストレスをなくせば軽快します。とにかく咳の引き金となる状況をなくすことです。しかしその逆にほどほどの運動は効果があります。

ほとんどの場合は気管拡張剤や抗炎症剤などの薬を飲ませる内科的な治療でコントロールが可能になります。発咳により呼吸器感染症を起こしてしまっている場合は抗生物質の内服も併用します。

太りすぎの犬には体重を減らす食事を与え、呼吸器系に負担がかかるものをできる限り遠ざけます。

また、つぶれた気管の周りにコイルを巻く手術法もありますが、高齢犬であれば手術の負担は大きく、また、これは合併症が起こることもあるむずかしい手術です。よって外科的な治療法においては賛否両論があります。

いずれにせよ飼い主さんが覚えておかなければならない重要なことは、気管虚脱によって起こる咳を止めることは内服などである程度コントロールできますが、この病気は治せるものではなく、生涯治療をし続けなければならないということです。


★どうすればこの病気を予防できるの?★

ではどうすればこの病気を予防できるでしょうか?

もともと気管虚脱は遺伝的なものや老齢による気管の変形がきっかけであることが多いため、必ず予防できる病気とは言い切れません。しかし、咳のきっかけとなる呼吸器系や心臓系の予防、気管への負担を少なくすることで発症を少なくすることはできます。

夏の蒸し暑い時期は特に気をつけましょう。家の中で涼しい場所を用意したりエアコンなどで空気調整してあげて、高温の環境や過度の運動、興奮などに気をつけましょう。

また、散歩中の首輪は気管部分を直接圧迫するため、その刺激により気管虚脱を誘発したり、咳がひどくなる場合があります。気管虚脱になる可能性がある場合には首をやめてハーネス(胴輪)にするとよいでしょう。さらに短頭種においては小さい時から食べ過ぎ、肥満、運動不足にならないように心がけ、胸への負担を減らす必要があります。

咳は気管に大きな負担をかけているだけでなく体力の消耗をも起こします。ペットが毎日快適に過ごせるような環境を作ってあげることで、少しでもこの病気を予防しましょう。

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