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しつけ・行動・マナー

攻撃性を科学的に考える【しつけ・行動・マナー 】

動物と共に生活することは、私たち人間に多くの喜びや楽しみを与えてくれ、さらにはヒーリング効果ももたらしてくれることは言うまでもありません。しかし、一方で人間あるいは同居動物への攻撃的な行動が、飼い主さんにとって切実な問題となることも少なくはありません。攻撃性をメカニズムから考えてみます。


★まずは人間の攻撃性の原因について★

最近では人間の医療において攻撃性に関する研究が進み、脳内ホルモンが攻撃性に影響を与えていることが解明されてきました。アメリカの研究では、犯罪者の特徴として「セロトニン」という脳内ホルモンの分泌が低く、「ノルアドレナリン」という脳内ホルモンの分泌が高いということが証明されました。また「セロトニン」の低下は子供たちの「キレル」現象の原因であると主張している研究者もいます。
しかし「セロトニン」の低下だけでは子供の「ブチギレ」現象を説明することは困難で、必須脂肪酸の欠乏による神経の信号伝達の不具合も関与すると考えられています。必須脂肪酸のうちDHA、EPA、アラキドン酸などはセロトニンの感受性の向上には有効で、この作用が脳の発育、機能に重要な役割を演じていると考えられているのです。


★動物達の攻撃性の原因は?★

攻撃性は野生動物にとっては生き残る為に必要不可欠な行動ですが、人間と共に生活するペットの攻撃性は飼い主さんにとって深刻な問題ともなります。タフツ大学の獣医行動学者は、動物病院に来院する問題行動を持つ動物のうち、約60%が攻撃性に関連する問題であると言います。
そんな中、特定の脳内物質が動物達の気分や行動に影響を与えることが明確に示されました。その化学物質のうち最も重要だと言われているのが「ノルエピネフリン」「ドーパミン」「セロトニン」です。動物の行動と脳神経の関係を証明するのは実はとても難しいのですが、攻撃性とセロトニンの関係については信頼度の高い結果が得られています。
攻撃性の脳内メカニズムに関する第一人者でもある上田秀一先生(獨協医科大学)の研究により、脳内の「セロトニン」が低下すると強い攻撃行動が起こることがラットやシルバーフォックス(銀ギツネ)で証明されました。また、ペンシルバニア大学とコーネル大学の共同研究では攻撃的な犬の脳脊髄液には「セロトニン」が低かったと報告され、人間同様に犬でも脳内の「セロトニン」が不足すると闘争的あるいは攻撃的になることが判明されています。


★食と攻撃性の関係★

攻撃性が強く、怖がりの動物に2週間、低タンパク質・高炭水化物を与えると攻撃行動が少なくなり、逆に高タンパク食を与えると、攻撃行動がさらに増加したという実験結果があります。簡単にポイントだけ説明すると「低タンパク食を与えると脳内で幸福感や満足感と関連する“セロトニン”が増えやすくなるため攻撃性が低下する」となります。
つまり攻撃的な動物に低タンパク食を与えてみる事は、状況を改善する可能性があるということです。とすると、攻撃的な動物に動物用の腎不全用の処方食(低タンパク食)を与える事によって補助的な効果が期待できるかもしれません。
攻撃性という視点だけではなく「セロトニン」が脳内で増えることは、効率的なダイエットにも繋がる可能性があります。脳内で「セロトニン」が増えると精神が安定するため満腹感を感じ、食べすぎを防止してくれるという訳です。逆に、脳内の「セロトニン」が少ないと精神的に不安定となり、満腹感を感じず食べ過ぎてしまうのです。


★「セロトニン」を増やすには?★

ではどうすれば「セロトニン」を増やすことが出来るのでしょうか?
「セロトニン」の前段階は「トリプトファン」です。精神を安定させる「セロトニン」はアミノ酸である「トリプトファン」を“材料”として脳内で作られます。つまり、肉類や乳製品などに多く含まれる「トリプトファン」は脳内で「セロトニン」に“変身”してくれるのです。
「トリプトファン」を多く含んだ肉類を適量に食べた方が脳内で「セロトニン」が作られやすくなり、満腹感を感じることによって食べ過ぎを防止できるという訳です。
さらに重要なポイントがあります。それは肉を食べて「トリプトファン」が脳に運ばれるためにはブドウ糖が必要であるということです。つまり、肉類をいくら食べても、ブドウ糖がなければ脳内に「トリプトファン」が入っていかず、「セロトニン」を作ることができないのです。「トリブトファン+ぶどう糖」の組み合わせが大切なのです。
余談ですが、人間のダイエット対策の1つとしてセロトニンを増やすような成分が含有されたダイエットピル(ダイエットに用いられる錠剤)が薬局等で入手可能になっています。本来はうつ病の治療薬として開発されたのですが、副作用的な効果として、精神状態が安定するため過剰な食欲を抑制し、その結果体重が減少することが分かっただめです。


これらの一連のメカニズムを考慮した上で、攻撃性の強い動物にセロトニンを増やすような成分が含有された抗うつ剤を使用するケースもありますが、信頼できる獣医師としっかり相談した上で投薬する必要があります。
今回は、脳内ホルモンを中心として現時点で明らかとなっている動物の攻撃性に関する事実をお伝えしましたが、残念ながら動物の攻撃性は完全に解明されている訳ではありません。更なる研究が待たれるところです。
今回は、いつもより専門用語が多く感じられた方もいらっしゃるかと思いますが、このようにペットの体の中のメカニズムを知ることはとても大切なことです。「なんでこの子はいつも攻撃的なの?」と怒ったり、諦めたりする前に、「この子の中で一体何が起きているんだろう」ということに興味を持つことも飼い主さんに求められていることではないでしょうか?

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